利尿剤の種類一覧|違いや特徴を詳しく解説しています

体内の余分な水分を減らし、むくみを改善してくれる利尿剤ですが、種類が多いため、それぞれの違いや選び方が分かりにくいと感じる方は多いのではないでしょうか。

ここでは、利尿剤の種類やどのような症状に使用されるのかなどについて、詳しく解説します。

そもそも利尿剤とは?

利尿剤は体内の余分な水分の排泄を促し、尿量を増やすことでむくみを軽減させる医薬品です。

体内の余分な水分が増えると、血液量が増えることになり、その分全身に血液を送るポンプの役割をしている心臓に負担がかかります。

利尿剤の効果で体内の水分量が減ると、体の中を循環している血液量も減るため、心臓への負担が減り、結果的に血圧が下がる降圧作用をもたらします。

利尿剤を飲み続けると危険?安全に服用するための方法を解説
むくみの改善などに用いられる利尿剤。むくみが気になる度に飲むからこそ、体にどういう影響があるのか気になりますよね。 本記事では利尿剤の副作用や安全に飲むための方法、安全性の高い利尿剤などを詳しく解説しています。

利尿剤の種類

利尿剤にはいろいろな種類があり、それぞれ作用の仕方や副作用などに違いがあります。

次の項目では、利尿剤の種類ごとに作用機序や副作用について解説します。

参考:利尿薬を正しく使いこなそう 腎疾患における処方の基本|第55回日本腎臓学会学術総会
参考:利尿薬の使いかた|医学書院

ループ利尿薬

ループ利尿薬
ループ利尿薬は、利尿薬の中でも第一選択薬であり、もっとも利尿作用の高い医薬品です。

利尿薬は腎尿細管でのナトリウムや水の再吸収を抑制し、循環血液を減少させます。

ヘレンループという尿細管がループ状になっている部分に作用して、尿に含まれている水分の再吸収を抑え、尿の量を増加させます。

それによりむくみや高血圧を改善させます。

利尿剤の中でも利尿作用が最も高く、発現時間も1時間のため、服用後に効果を実感できるまでの時間が早いです。

ループ利尿薬
医薬品名 ラシックス(フロセミド)
ルプラック(トラセミド)
ダイアート(アゾセミド)
発現時間 約1時間
持続時間 約4~6時間
利尿作用 強い
降圧作用 中程度

ループ利尿薬の副作用

ループ利尿薬の副作用や注意点は以下の通りです。

・電解質異常
低カリウム血症、低ナトリウム血症、低クロール血症などの電解質異常が現れる場合があります。

・消化器症状
下痢、食欲不振、吐き気などの症状があらわれる場合があります。

・精神神経系症状
まれに頭痛、めまい、聴覚障害などが現れる場合があります。

チアジド系(サイアザイド系)利尿薬

チアジド系利尿薬
チアジド系(サイアザイド系)利尿剤は、血圧を下げる降圧作用が強い利尿剤で、利尿作用自体はそこまで高くありません。

尿細管の一部である遠位尿細管という部分で、水分やナトリウムイオンが再吸収されるのを抑え、尿として体外へ排出します。

また、降圧作用があるため高血圧の治療に用いられており、塩分過多が原因の高血圧患者の第一選択薬として使用されています。

発現時間は2時間のため、ループ利尿薬よりは効果を感じるまで時間がかかりますが、効果の持続時間は長めの24時間となっています。

チアジド系(サイアザイド系)利尿薬
医薬品名 ダイクロトライド(ヒドロクロロチアジド)
フルイトラン(トリクロルメチアジド)
ベハイド(ベンチルヒドロクロロチアジド)
発現時間 約2時間
持続時間 約24時間
利尿作用 やや強い
降圧作用 強い

チアジド系(サイアザイド系)利尿薬の副作用

チアジド系(サイアザイド系)利尿薬の副作用や注意点は以下の通りです。

・電解質異常
低カリウム血症や、低ナトリウム血症などの電解質異常が現れる場合があります。

・過敏症
頻度はまれですが、顔面潮紅、発疹、光線過敏症などが現れる場合があります。

・精神神経系症状
頭痛、めまいなどが現れる場合があります。

カリウム保持性利尿薬

カリウム保持性利尿薬
カリウム保持性利尿薬は、ナトリウムと水の排泄をメインとした利尿薬です。

水分や塩分を調整するホルモン「アルドステロン」の働きを抑えることで、カリウムを保持しながら水分・塩分を排泄し、低カリウム血症のリスクを軽減します。

発現時間は2時間となっているため、ループ利尿薬に比べると効果を実感できるまで時間がかかりますが、持続時間は11時間のため約半日は効果が続きます。

利用作用や降圧作用があまり高くないため、低カリウム血症の予防のために、チアジド系(サイアザイド系)利尿薬やループ利尿薬と併用されることが多い医薬品です。

カリウム保持性利尿薬
医薬品名 アルダクトン(スピロノラクトン)
トリテレン(トリアムテレン)
ソルダクトン(カンレノ酸カリウム)
発現時間 約2時間
持続時間 約11時間
利尿作用 弱い
降圧作用 やや弱い

カリウム保持性利尿薬の副作用

カリウム保持性利尿薬の副作用や注意点は以下の通りです。

・電解質異常
高カリウム血症などの電解質異常が現れる場合があります。

・消化器症状
食欲不振、吐き気、便秘、口渇、下痢などが現れる場合があります。

・急性腎障害
頻度はまれですが、尿量が少なくなる、尿がほとんど出ない、むくみ、発疹、体のだるさが現れる場合があります。

・精神神経系症状
頭痛、めまいなどの症状があらわれる場合があります。

バソプレシンV2受容体阻害薬

バソプレシンV2受容体阻害薬
バソプレシンV2受容体阻害薬は、抗利尿ホルモンであるバソプレシンの受容体に作用をおよぼすことで、利尿作用を示します。

尿細管の一部である腎集合管という部分でバソプレシンの働きを抑制し、水分の再吸収を抑えます。

ナトリウムやカリウムなどの電解質を排出せずに水分だけを排出するため、水利尿薬とも呼ばれています。

そのため高ナトリウム血症をおこしやすいので、ループ利尿薬やチアジド系(サイアザイド系)利尿薬などと併用することが推奨されています。

発現時間は4時間のため、服用してから効果を実感できるまでに時間がかかりますが、利尿作用が強く持続時間が24時間のため、長時間高い効果を得られます。

バソプレシンV2受容体阻害薬
医薬品名 サムスカ(トルバプタン)
発現時間 約4時間以内
持続時間 約24時間
利尿作用 強い
降圧作用 ほぼない

バソプレシンV2受容体阻害薬の副作用

バソプレシンV2受容体阻害薬の副作用や注意点は以下の通りです。

・消化器症状
便秘、食欲不振、口渇、下痢、吐き気などがあらわれる場合があります。

・精神神経症状
めまい、頭痛、不眠などがあらわれる場合があります。

・腎臓、泌尿器症状
多尿や頻尿などがあらわれる場合があります。

・高ナトリウム血症
利尿作用による血液濃縮により、血液中のナトリウム濃度が高くなる場合があります。

・肝機能障害
AST(GOT)、ALT(GPT)などの数値が上昇する、肝機能障害があらわれる場合があります。

ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド

心房性ナトリウム利尿ペプチド
ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドは、通称ハンプと呼ばれる医薬品です。

利尿薬と血管拡張作用を併せ持ち、腎機能を高めることで、バソプレシンとアルドステロンのふたつのホルモンの作用を抑え利尿作用を示します。

急性心不全に効果があり、静脈の血が溜まるうっ血度が高いとより高い利尿効果を期待できます。

利尿作用と降圧作用はどちらも中程度となっています。

注射薬のため、持続的に薬液を注入する投与法の場合、効果の持続時間は投薬終了までとなっています。

ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド
医薬品名 サムスカ(トルバプタン)
発現時間 約4時間以内
持続時間 約24時間
利尿作用 強い
降圧作用 ほぼない

ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドの副作用

ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドの副作用や注意点は以下の通りです。

・循環器系症状
不整脈(上室性頻脈、心房細動)があらわれる場合があります。

・血液系症状
赤血球減少、血小板減少、白血球減少、白血球増加などがあらわれる場合があります。

・肝臓系症状
ALT上昇、AST上昇、ALP上昇、LDH上昇、γ-GTP上昇、総ビリルビン上昇などがあらわれる場合があります。

・腎臓系症状
クレアチニン上昇、BUN上昇があらわれる場合があります。

・その他
血清電解質の変動、血清蛋白の低下、尿蛋白の増加があらわれる場合があります。

・重大な副作用
低血圧ショック、血圧低下、徐脈などがあらわれる場合があります。

浸透圧利尿薬

浸透利尿薬
浸透圧利尿薬は尿細管内の浸透圧を上昇させ、この浸透圧を均等に保つために水とナトリウムの再吸収を減少させる利尿剤です。

投与すると血管内の浸透圧が高くなり、水やナトリウムが取り込まれます。

浸透圧利尿作用の効果が持続しているため、取り込まれた水やナトリウムの再吸収を阻害し利尿効果をあらわします。

浸透圧利尿薬の発現時間は投与後すぐ、効果の持続時間は投与終了までとなっています。

浸透圧利尿薬
医薬品名 イソバイド内用液(イソソルビド)
グリセオール注射(濃グリセリン)
マンニットール(D-マンニットール)
発現時間 投与後すぐ
持続時間 投与終了まで持続
利尿作用 中程度
降圧作用 弱い

浸透圧利尿薬の副作用

浸透圧利尿薬の副作用や注意点は以下の通りです。

◇注射液タイプ◇

・循環器系症状
胸部圧迫感があらわれる場合があります。

・精神神経系症状
めまいや頭痛があらわれる場合があります。

・消化器系症状
悪心や口渇があらわれる場合があります。

・その他
電解質失調等の脱水症状、悪寒があらわれる場合があります。

・重大な副作用
大量投与により、急性腎障害があらわれる場合があります。

・電解質異常
低ナトリウム血症、高カリウム血症、代謝性アシドーシスがあらわれる場合があります。

◇内服タイプ◇

・消化器系症状
下痢、嘔気、嘔吐、悪心、食欲不振があらわれる場合があります。

・精神神経系症状
頭痛、不眠があらわれる場合があります。

・重大な副作用
ショック、アナフィラキシーがあらわれる場合があります。

炭酸脱水素酵素阻害薬

炭酸脱水素酸素阻害薬
炭酸脱水素酵素阻害薬は、緑内障の治療に使われる治療薬です。

緑内障は、目の中の圧力が高くなることで視神経にダメージが加わる疾患です。

炭酸脱水素酵素阻害薬は酸素の働きを阻害するため、眼房水の生成を抑制して眼圧を下げ、緑内障の治療をすることができます。

利尿作用が弱いため、利尿薬の中でも唯一浮腫性疾患に対して適用がありません。

発現時間は約2~4時間となっており、効果を実感できるまで少し時間のかかる医薬品です。

持続時間は約6~12時間のため、長くて半日効果が続きます。

炭酸脱水素酵素阻害薬
医薬品名 イソバイド内用液(イソソルビド)
グリセオール注射(濃グリセリン)
マンニットール(D-マンニットール)
発現時間 投与後すぐ
持続時間 投与終了まで持続
利尿作用 中程度
降圧作用 弱い

炭酸脱水素酵素阻害薬の副作用

炭酸脱水素酵素阻害薬の副作用や注意点は以下の通りです。

◇点眼薬◇

・目のかすみ、異物感、刺激感、結膜炎などがあらわれる場合があります。

◇服用薬◇

・過敏症系症状
発疹があらわれる場合があります。

・消化器系症状
下痢、腹痛、食欲不振、悪心・嘔吐、味覚異常があらわれる場合があります。

・精神神経系症状
知覚異常(しびれ等)、めまい、頭痛があらわれる場合があります。

・腎・尿路系症状
尿量がふえる場合があります。

・その他
倦怠感があらわれる場合があります。

・重大な副作用
 代謝性アシドーシス、電解質異常、ショック、アナフィラキシーなどがあらわれる場合があります。

どの種類の利尿剤がいい?

薬の種類
利尿剤は、基本的にどの種類の物でもむくみや心不全、高血圧などの改善に効果が期待できます。

ただし、利尿作用は強いけれど血圧降下作用は弱い利尿作用は弱いけれど血圧降下作用は強いなど種類に応じて作用に強さの違いがあり、向き、不向きがあります。

そのため期待する効果を得られるように、症状に合わせて使い分けることが大切です。

次の項目では、疾患別の利尿剤の使い分けについて解説します。

浮腫(むくみ)

浮腫(むくみ)に最も効果的なのは、利尿剤の中でも利尿作用が最も強いループ利尿薬です。

ループ利尿薬は、尿細管の中でも一番ナトリウムやカリウムが多いヘンレループという場所での再吸収を阻害するため、もっとも利尿作用が高く現れます。

ただし、脳浮腫の場合は、尿細管内の浸透圧を高く保つことで水分の再吸収を抑制する浸透圧利尿薬の方が最適であると言われています。

うっ血性心不全

うっ血性心不全は、心臓の働きが悪くなり全身に血液が滞留し、肺やその他の場所に静脈の血が溜まったうっ血(鬱血)が生じた状態のことです。

浮腫や肺水腫によって毛細血管から血液の液体成分が肺胞内へ染み出すため、利尿作用が強いループ利尿薬を使用して体内の水分量やナトリウム量を調整します。

ループ利尿薬だけで効果が不十分の場合は、水分のみを排泄するバソプレシンV2受容体阻害薬の使用が推奨されています。

急性心不全

高血圧や心筋梗塞など何らかの原因により、心臓が全身に血液を送る機能が急低下してしまい、突然の息切れや呼吸困難がおこる状態をいいます。

この急性心不全には、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(通称「ハンプ」)が効果的であるとされています。

ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は心房から分泌されるホルモンで、利尿薬と血管拡張作用を併せ持っています。

そのため急性心不全の治療薬として臨床応用されており、広く使用されています。

高血圧

高血圧は、血液が血管を通る際に、血管の壁に与える圧力が慢性的に正常値より高くなる状態のことです。

そのため常に血管に負担かかり動脈硬化を起こしやすいため、降下作用の強いチアジド系(サイアザイド系)利尿薬がおすすめです。

チアジド系(サイアザイド系)利尿薬は、利尿作用によって体液量を減らし血圧を低下させますが、さらに長期的にみると血管を拡張する作用が出現するため、二つの効果により血圧がさがります。

また、場合によっては降下作用のあるカリウム保持性利尿薬との併用が推奨される場合もあります。

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ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群とは、タンパクが尿内にたくさん出てしまい、血液中のタンパクが減ることで(低タンパク血症)むくみが起こる疾患です。

ネフローゼ症候群は、利尿薬の中ではループ利尿薬が最も効果的です。

ループ利尿薬が第一選択薬ですが、効果が不十分な場合はカリウム保持性利尿薬やサイアザイド系利尿薬との併用が望ましいとされています。

肝疾患に伴う腹水

肝臓が機能障害をおこす肝疾患になると、血液中を流れるタンパク質が減少し、血管外へ染み出してしまい、タンパク質を含む体液がお腹や手足に溜まります。

治療には過剰な体液を排出することが大切ですが、これにはカリウム保持利尿薬が最も適しているとされています。

利尿剤は海外通販での購入も可能

通販を利用する女性
むくみの解消に効果的な利尿剤ですが、効果が強いため基本的には医師の診断の元、病院で処方してもらう形となります。

しかし、海外通販を利用することで、病院で処方される医療用の利尿剤を手軽に購入できます。

病院処方よりも安く、手軽に購入できるためおすすめです。

【利尿剤】市販薬のおすすめ12選!即効性があるものは!?
利尿剤は足や顔、体などのむくみの改善に有効的です。そんな利尿剤は市販されているのでしょうか?本記事では購入方法やおすすめの利尿剤などをご紹介します。

海外通販で購入できる利尿剤一覧

商品名 ルプラック・ジェネリック ムクミトール ヒドロクロロチアジド・ジェネリック スピロノラクトン(アルダクトン) トバプタン(サムスカジェネリック)
画像 ルプラック・ジェネリック ムクミトール ヒドロクロロチアジド・ジェネリック スピロノラクトン(アルダクトン) トバプタン(サムスカジェネリック)
価格 100錠:2,250円~ 100錠:2,200円~ 100錠:1,800円~ 28錠:3,400円~ 12錠:7,100円~
特徴 ループ利尿薬
最も利尿作用が強い
ループ利尿薬
1錠あたり22円とコスパ◎
チアジド系(サイアザイド系)利尿薬
持続効果が最も長い
カリウム保持性利尿薬
副作用を起こしにくい
バソプレシンV2受容体阻害薬
水のみ排出する水利尿薬
ボタン

まとめ

利尿剤の種類について説明しましたが、いかがだったでしょうか。

一口に利尿剤といっても、利尿作用の強さだけではなく、血圧降下作用とのバランス、効果が現れるまでの時間や効果の持続時間など、いろいろな種類があります。

症状や疾患に合った利尿剤を服用することで、より高い利尿効果を得ることができ、むくみを改善できます。

自分の症状や希望している効果と照らし合わせて、選ぶ際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

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