「夜中に何度もトイレがしたくなる」「夜中に2回以上トイレに起きる」など、夜間の排尿回数が多い方は夜間頻尿の可能性があります。
夜間頻尿は薬物療法や行動療法などで治療する場合が大半ですが、「ためしてガッテン」では手軽に実践できる体操や食事法を紹介しました。
本記事では、ためしてガッテンで紹介された改善法の他、原因別の対処法も併せて解説します。
病院や薬だけに頼りたくない方は、ぜひ参考にしてみてください。
ためしてガッテンの夜間頻尿の改善法
NHK総合テレビの「ガッテン!(ためしてガッテン)」では、身近な病気や悩みにまつわる健康法や食事法を紹介しています。
2020年7月15日の放送では「朝までぐっすり快眠!夜、トイレに起きないための新秘策」として、夜間頻尿の改善法が取り上げられました。
番組で紹介された3つの改善法について、詳しく解説します。
ただし、夜間頻尿の原因は人によって様々です。
原因によっては上記の方法で改善しない可能性もあるため、原因もあわせてご確認ください。
弾性ストッキング
体内の血液や水分は、ふくらはぎの筋肉がポンプ代わりとなり循環しています。
しかし、加齢に伴いポンプ機能が低下すると、膀胱に送られるはずの水分がふくらはぎに留まります。
寝転がると重力の影響を受けにくくなり、ふくらはぎに溜まった水分が膀胱に送られるため、夜間に尿意を引き起こすと考えられています。
衰えたポンプ機能を補うためには、弾性ストッキングで外から圧力をかける方法がおすすめです。
・起床してから夕方まで弾性ストッキングを着用する
・膝下までのハイソックスタイプがおすすめ
・糖尿病の方や心臓が弱い方は医師に相談してからおこなう
ストッキングによりふくらはぎに圧力がかかり、日中の排尿を促す効果が期待できます。
足上げ
ふくらはぎの位置が身体より高くなれば、ふくらはぎに溜まった水分を全身に送り出しやすくなります。
日中に時間がある方は、次の方法を参考に足上げを試してみてください。
①楽な姿勢で寝転がる
②ふくらはぎや足首の下に10~15cmの高さのクッションなどを敷く
③足を10~15cm程度上げたまま30分間安静にする
就寝前におこなうと睡眠中に尿意を感じてしまうため、昼から夕方頃がおすすめです。
ただし、足上げをしながら昼寝をすると不眠の原因となるため、眠らないようにしましょう。
実際に1ヶ月間継続した方は「夜中のトイレの回数が3回から1回程度に減った」「睡眠不足が解消された」と効果を実感しています。
減塩
塩分が多い食事を摂ると、体内の塩分濃度を保つために水分の摂取量が増加する傾向があります。
特に、夕食は減塩食を心掛けることが大切です。
外食や弁当、加工食品には塩分が多く使用されているため、減塩調味料を使用して自炊することをおすすめします。
また、アルコールを飲むと塩辛いおつまみが食べたくなる方が多く、アルコールには利尿作用もあるため、晩酌はなるべく控えましょう。
治らない場合は原因が異なる可能性も
「ガッテン!」で紹介された改善法は、加齢によるポンプ機能低下が原因の場合に推奨される方法です。
しかし、夜間頻尿は他にも原因が考えられるため、高齢者や足がむくみやすい方以外は該当しない可能性があります。
夜間頻尿には他にもさまざまな原因があるため、その他の原因と改善法をご紹介します。
膀胱容量の低下
尿を溜めるための膀胱の容量が少ない方は尿意を感じやすくなり、夜間頻尿を引き起こす場合があります。
夜間だけでなく昼間も排尿回数が多い場合は、膀胱容量の低下の可能性が高いでしょう。
膀胱容量の低下は、過活動膀胱や前立腺肥大症が主な原因です。
過活動膀胱の場合は、トイレに駆け込むほどの強い尿意を感じる場合や尿漏れが起こる場合があります。
過活動膀胱は脳や脊髄の疾患、パーキンソン病などによる神経性、または骨盤底筋の衰えなどによる非神経性に分類されます。
前立腺肥大症は男性に起こる症状で、過活動膀胱と併発するケースが大半とされています。
ただし、前立腺肥大症は夜間頻尿の他に尿の出にくさや勢いの弱さを併発する場合が多いため、総合的に判断することが大切です。
過活動膀胱による夜間頻尿の対策
過活動膀胱による夜間頻尿は薬物療法、膀胱訓練、骨盤底筋訓練などで治療や対策が可能です。
薬物治療では、トビエースやベシケア、デトルシトールなどの抗コリン剤が第一選択薬です。
商品名 | ベシケア | トビエース | デトルシトール・ジェネリック |
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価格 | 30錠:5,000円~ | 28錠:4,500円~ | 30錠:2,250円~ |
特徴 | 副作用がでにくく、 持続性も高い |
デトルシトールのプロドラッグ※ 口の渇きなどの副作用が出にくい |
口の渇きなどの副作用が出にくい |
ボタン |
※プロドラッグ:成分の吸収性を良くするために、体内で代謝されるよう改良されたもの
ただし、抗コリン薬によって排尿障害やイレウス(腸閉塞)などの副作用が起こる場合があるため、ベタニスやベオーバなどのβ3刺激薬も用いられます。
抗コリン薬と比較すると副作用のリスクは低いですが、服用できない方もいるため医師や薬剤師の指導を受けましょう。
また、以下のような膀胱や骨盤底筋を鍛える訓練により夜間頻尿を改善できる可能性があります。
・骨盤底筋訓練:肛門を意識的に締めて、骨盤底筋を鍛える方法
薬だけに頼りたくない方は、これらの訓練も試してみてください。
前立腺肥大症による夜間頻尿の対策
前立腺肥大症による夜間頻尿は、原因疾患を治療する必要があります。
尿道が狭くなっている場合や前立腺が肥大しすぎている場合など、症状により治療薬を選択します。
α1遮断薬:テラゾシンやシロドシンなど
PDE5阻害薬:タダラフィルやシルデナフィルなど
5α還元酵素阻害薬:デュタステリド
商品名 | ユリーフ・ジェネリック | ザルティア・ジェネリック | ザガーロ・ジェネリック | トビエース |
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価格 | 15錠:1,800円~ | 28錠:2,880円~ | 30錠:2,700円~ | 28錠:4,500円~ |
特徴 | αブロッカー 前立腺が小さい場合向き |
PDE5阻害薬 前立腺が小さい場合向き |
5α還元酵素阻害薬 前立腺が大きい場合向き |
抗コリン薬 排尿の我慢が弱い場合向き |
ボタン |
また、薬物療法では改善できない場合は手術が必要なため、適した治療を受けることが大切です。
多尿・夜間多尿
1日を通して尿量や排尿回数が多い方は多尿症、また、日中の尿量や排尿回数に問題がなく、夜間のみ頻尿の場合は夜間多尿の可能性があります。
なお、夜間の排尿量が1日の33%以上を占める場合は夜間多尿に該当します。
多尿症や夜間多尿は、次のようなさまざまな原因が考えられます。
・水分の過剰摂取
・薬の副作用の影響
・ホルモンバランスの乱れや異常
・疾患(尿崩症、糖尿病、腎臓病、腎不全、高血圧、心不全など)
水分の過剰摂取が原因の場合は水を飲む量を調節しましょう。
また、薬の副作用が原因の場合は薬の切り替えで改善が期待できます。
ただし、ホルモンバランスやストレスなど自分では原因が分からないことも多いため、まずは医師の診断を受けることが大切です。
睡眠障害
夜中に何度もトイレに行きたくなるせいで睡眠障害を起こすことがありますが、反対に、中途覚醒が原因で夜間頻尿が起きる場合もあります。
睡眠障害と夜間頻尿は密接に関係しているため、併せて治療することが大切です。
睡眠障害による夜間頻尿の対策
睡眠障害による夜間頻尿は、次の方法で改善が期待できます。
・睡眠改善サプリの服用
・睡眠薬の服用
・生活習慣の改善
睡眠改善サプリでは、加齢による睡眠障害に効果が期待できるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)や、体内時計を整えるメラトニンがおすすめです。
商品名 | アンチエイジングサプリ(NMN) | NMNパウダー | バイタルミー・メラトニン | メラトニングミ |
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価格 | 30錠:3,900円~ | 1本:5,600円~ | 120錠:2,000円~ | 60粒:3,500円~ |
特徴 | 話題の老化防止成分NMNのサプリ 加齢による睡眠障害におすすめ |
パウダータイプのNMN | 自然な眠気を促す睡眠改善サプリ | 美味しく服用できる グミタイプのメラトニン |
ボタン |
ただし、睡眠改善サプリは健康食品のため、睡眠障害が深刻な場合は睡眠薬できちんと治療することが大切です。
睡眠薬は強さや効き目の長さによりさまざまな種類があります。
商品名 | ベルソムラ | デエビゴ | ロゼレム |
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価格 | 100錠:24,680円~ | 28錠:14,000円~ | 100錠:34,600円~ |
特徴 | 穏やかな効果 依存性が少ない |
比較的新しい睡眠薬 依存性が少ない |
寝つきが悪い場合にも有効 依存性が少ない |
ボタン |
中途覚醒にはおもにデエビゴ、ベルソムラ、サイレースなどが用いられます。
また、サプリや薬の服用と合わせて、生活習慣の改善も心掛けましょう。
ストレスを取り除く
湯船に浸かってリラックスする
就寝前にアルコールを飲み過ぎない
就寝前にカフェインを摂取しない
日中に適度に身体を動かす
生活リズムを整える
すぐに実践できる方法から試してみてください。
自分でできる診断方法
夜間頻尿の原因を紹介しましたが、いくつかの原因が複雑に絡み合っている場合もあります。
また、尿検査や問診などにより総合的に判断する必要があります。
しかし、病院を受診せずに自分で判断したい方は、排尿日誌による日々の記録がおすすめです。
排尿日誌とは
排尿日誌は1回あたりの排尿量などを計測し、頻尿の原因を知るための方法です。
・昼間の排尿回数、排尿量
・夜間の排尿回数、排尿量
・1回あたりの排尿量
・1日あたりの排尿量
・就寝後の第一覚醒時間 など
これらの情報を基に多尿症や夜間多尿、膀胱容量の低下などが判断できるため、夜間頻尿の原因を知ることができます。
夜間頻尿の診療ガイドラインでも推奨されている方法です。
※参考:日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会「夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]」
排尿日誌のつけ方
排尿日誌で次のような項目を記録することで、夜間多尿であるかどうか判断できます。
・起床から就寝までの間に排尿した時刻、尿量
・切迫感や尿漏れの有無 など
また、尿量を正確に記録することが大切なため、計量カップや自作の計量容器で測りましょう。
1日の記録を基に、次の計算式を用いて「1日の尿量に対する夜間尿量の割合」を出すことができます。
- 夜間尿量÷(夜間尿量+昼間尿量)×100
夜間尿量の割合が若年層は20%、中高齢層は33%を超える場合に夜間多尿と診断されます。
夜間多尿の数値に該当しない方は、過活動膀胱や前立腺肥大症、睡眠障害などを疑いましょう。
なお排尿日誌は、夜間頻尿.comに掲載されているテンプレートのダウンロードがおすすめです。
よくある質問
夜間頻尿の改善法に関するよくある質問にお答えします。
ご紹介した改善法の他にも、手軽に実践できる方法が知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
夜間頻尿はカイロで改善される?
ふくらはぎのポンプ機能の低下が原因の場合、ふくらはぎを温めることで血流がよくなり夜間頻尿の改善が期待できます。
特に、ふくらはぎがむくみやすい方や冷え性の方におすすめです。
ふくらはぎにカイロを貼ったり、湯たんぽや電気毛布を使用したりしてふくらはぎを温めてみてください。
ただし、低温やけどを起こす恐れがあるため就寝中にカイロを貼ったままにしないよう注意が必要です。
夜間頻尿を改善する食べ物は?
頻尿の改善には、マグネシウムを多く含む銀杏や山芋がおすすめです。
マグネシウムには膀胱の筋肉を収縮させる働きがあり、尿漏れにも効果が期待できます。
また、塩分を摂り過ぎると水分摂取量が増加し、尿量が増える傾向があります。
アルコールやカフェイン、カリウムにも利尿作用があるため、就寝前はなるべく控えましょう。
心当たりがある方は食生活を改善してみてください。
原因に合わせて改善法を選ぼう
夜間頻尿はふくらはぎのポンプ機能の低下、膀胱容量の低下、多尿症、睡眠障害などのさまざまな原因が考えられます。
原因によって治療法や改善法が異なるため、まずは自分の症状を見極めることが大切です。
自分で症状を判断したい方は、排尿日誌を活用してみてください。
また、比較的軽症の方や悪化を予防したい方は食生活や生活習慣の改善、睡眠改善サプリなどがおすすめです。