抗生物質の種類について|分かりやすく解説しています。

抗生物質は細菌の感染症に使われるお薬で、風邪をひいた時、歯の治療、性感染症の治療など、医療には欠かせない大事なお薬です。

そんな抗生物質ですが、内服薬だけでもたくさんの種類があります。
当ページでは抗生物質の種類(内服薬)についてわかりやすく、詳しく解説しています。

抗生物質とは

抗生物質とは、細菌を死滅させたり、細菌の増殖を抑える薬のことです。

細菌が原因で起こる感染症の治療に有効とされています。

抗菌薬や抗生剤とも呼ばれていますが、当ページでは抗生物質で統一しています。

抗ウイルス薬との違い

抗生物質は細菌にはたらく薬のため、細菌以外の病原体であるウイルスには一切無効です。

たとえば、風邪を引いた時に抗生物質を処方されることがあります。
これは風邪の10~20%が細菌による感染が原因とされているためです。

80~90%を占めるウイルス感染による風邪には、抗生物質は必要ありません。

ウイルス性の感染症には、抗ウイルス薬を使用しましょう。

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抗生物質の種類一覧

抗生物質には数百種類もの種類があり、それぞれ作用や特徴、系統などで分類分けされています。

まずは一部の代表的な医薬品をご紹介します。

抗生物質の種類 系統名 医薬品名
殺菌性 ペニシリン系 サワシリン(アモキシシリン)、ビクシリンS(アンピシリン)、オーグメンチン(アモキシシリン、クラブラン酸)など
セフェム系 ケフラール(セファクロル)、フロモックス(セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物)など
ホスホマイシン系 ホスミシン(ホスホマイシンカルシウム水和物)
キノロン系(ニューキノロン) クラビット(レボフロキサシン水和物)、ジェニナック(メシル酸ガレノキサシン水和物)など
静菌性 テトラサイクリン系 ビブラマイシン(ドキシサイクリン)、ミノマイシン(ミノサイクリン)など
マクロライド系 ジスロマック(アジスロマイシン)、エリスロシン(エリスロマイシン)、クラリス(クラリスロマイシン)など

殺菌性と静菌性の違いや系統に関しては、次の項目から詳しく解説していきます。

抗生物質の種類(1)


抗生物質は大きく分けて「静菌性」と「殺菌性」の2種類に分けられます。

静菌性は細菌の発育速度を抑え、殺菌性は細菌を直接死滅させます。
必ずしも殺菌性が静菌性より優れているというわけではありません。

抗生物質の種類について詳しく解説します。

静菌性

静菌性抗生物質とは、増殖中の細菌の発育速度を抑える物質です。

「細菌の増殖を抑えるだけ」と思われがちですが、その後、人間自らの免疫力で細菌を殺すことで、結果的に感染症を治療することができます。

マクロライド系テトラサイクリン系、リンコマイシン系、クロラムフェニコール系など

殺菌性

殺菌性抗生物質とは、増殖中の細菌を殺す作用のある物質です。

作用が強いため、その分副作用も強いとされています。
免疫力が低下していたり、重篤な感染症の場合には殺菌性の抗生物質を使用します。

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抗生物質の種類(2)作用の仕方

抗生物質は作用の仕方によって、以下のような種類に分けられます。

細胞壁合成阻害

細菌には「細胞壁」という細胞を取り囲む壁があり、この細胞壁により自らの形を保っています。
この細胞壁を壊すことで、細菌を死滅させることを「細胞壁合成阻害」といいます。

細胞壁合成阻害

人間の細胞には細胞壁がないため、抗生物質が人間の細胞を壊すことはありません。

ペニシリン系セフェム系ホスホマイシン系、グリコペプチド系など

細胞膜機能阻害

細菌の細胞膜に結合し、膜の構造を変化させることを「細胞膜機能阻害」といいます。

細胞膜機能阻害

直接細胞膜に働きかけ、殺菌的に作用する抗生物質です。

ポリエン系、ペプチド系など

タンパク質合成阻害

細菌には自分の体を守る細胞質があり、そこにタンパク質を作るリボゾームがあります。

このリボゾームの働きを止めて、タンパク質の合成をできなくすることを「タンパク質合成阻害」といいます。

タンパク質合成阻害

生きていくために必要なタンパク質を合成できなくなった細菌は増殖できなくなります。

テトラサイクリン系マクロライド系、アミノグリコシド系など

核酸合成阻害

細胞の核酸(DNA・RNA)の合成に関わる酵素を阻害することを「核酸合成阻害」といいます。
DNAが合成されなくなることで、細菌を死滅させます。
核酸合成阻害

キノロン系、ピリドンカルボン酸系など

葉酸合成阻害

葉酸の合成を阻害することを「葉酸合成阻害」といいます。
細菌のDNA合成には葉酸が必要なため、葉酸を作れなくすることで、細菌の増殖を抑えます。
葉酸合成阻害

サルファ剤など

抗生物質の種類(3)系統名

現在使われている代表的な抗生物質の系統名を紹介します。

抗生物質の種類 系統名 作用機序 有効な疾患
殺菌性 ペニシリン系 細胞壁合成阻害 梅毒、淋病、肺炎、気管支炎など
セフェム系 咽頭炎、扁桃炎、気管支炎など
ホスホマイシン系 膀胱炎、腎盂腎炎、感染性腸炎など
キノロン系(ニューキノロン) 核酸合成阻害 マイコプラズマ、結膜炎、ものもらいなど
静菌性 テトラサイクリン系 タンパク質合成阻害 淋病、マイコプラズマ、クラミジア、咽頭クラミジアなど
マクロライド系 クラミジア、淋病、マイコプラズマなど

参考:おくすり110番「細菌感染の薬x9」

ペニシリン系

特徴
  • 殺菌性
  • 細胞壁合成阻害

細菌の細胞壁の合成を阻害することで、細菌を死滅させる薬です。

人類初の抗生物質で、当時不治の病であった肺炎や破傷風などの伝染病を治しました。
長い歴史があるため、世界中で最も広く使われている抗生物質です。

副作用は少なく、妊娠中でも最も安全に使用できるとされています。

ペニシリン系の一般的な薬
・サワシリン(有効成分:アモキシシリン)
・パセトシン(有効成分:アモキシシリン)
・ビクシリンS(有効成分:アンピシリン、クロキサシリン)
・オーグメンチン(有効成分:アモキシシリン、クラブラン酸)
・クラバモックス(有効成分:アモキシシリン、クラブラン酸)
商品名 アモキシシリン ワイモックス(アモキシシリン) ビクシリン・ジェネリック
画像 アモキシシリン ワイモックス(アモキシシリン) ビクシリン・ジェネリック
有効成分 アモキシシリン アモキシシリン アンピシリン
特徴 「サワシリン」や「パセトシン」のジェネリック医薬品 「サワシリン」や「パセトシン」のジェネリック医薬品 「ビクシリン」のジェネリック医薬品
価格 21錠:1,420円~ 150カプセル:6,500円~ 100錠:4,800円~
購入

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代表的な疾患

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セフェム系

特徴
  • 殺菌性
  • 細胞壁合成阻害

ペニシリン系に近い抗生物質で、細菌の細胞壁の合成を阻害することで、細菌を死滅させる薬です。
開発された世代によって、第一世代~第四世代に分けられます。

副作用は少ない方ですが、発疹や下痢を起こすことがあります。

セフェム系の一般的な薬
・ケフラール(有効成分:セファクロル)
・パンスポリン(有効成分:セフォチアム塩酸塩)
・セフゾン(有効成分:セフジニル)
・フロモックス(有効成分:セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物)
・メイアウト(有効成分:セフジトレン ピポキシル)
セフジニル
「セフゾン」のジェネリック医薬品
50錠:2,700円~

代表的な疾患

咽頭炎扁桃炎、気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎ものもらい

マクロライド系

特徴
  • 静菌性
  • タンパク質合成阻害

細菌のタンパク質の合成を阻害することで、細菌の増殖を抑える薬です。
ペニシリン系やセフェム系では無効な、マイコプラズマやクラミジアにも有効という特徴があります。

副作用は少ない方ですが、吐き気や胃痛、軟便の症状が稀にあります。

また、併用薬の代謝を強く阻害するため、飲み合わせに注意する必要があります。

マクロライド系の一般的な薬
・エリスロシン(有効成分:エリスロマイシン)
・クラリス(有効成分:クラリスロマイシン)
・クラリシッド(有効成分:クラリスロマイシン)
・ジスロマック(有効成分:アジスロマイシン)
・ジョサマイ(有効成分:ジョサマイシン)
・アセチルスピラマイシン(有効成分:スピラマイシン)
商品名 ジスロマックジェネリック(ジスリン) アジードライシロップ(ジスロマック) クラリスロマイシン・ジェネリック エリスロマイシンTC
画像 ジスロマックジェネリック(ジスリン) アジードライシロップ(ジスロマック) クラリスロマイシン・ジェネリック エリスロマイシンTC
有効成分 アジスロマイシン アジスロマイシン クラリスロマイシン エリスロマイシン
特徴 「ジスロマック」のジェネリック医薬品 「ジスロマック」のジェネリック医薬品 「クラリス」や「クラリシッド」のジェネリック医薬品 「アイロタイシン」のジェネリック医薬品
価格 12錠:2,700円~ 2本:1,080円~ 5錠:1,410円~ 16錠:3,000円~
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代表的な疾患

梅毒淋病、マイコプラズマ、クラミジア咽頭クラミジア咽頭炎副鼻腔炎、気管支炎

※クラリス、クラシッドは、胃潰瘍(ピロリ菌)にも有効です

お薬なびでは、ピロリ菌治療薬セットをお得に販売中です。

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1セット:13,400円
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テトラサイクリン系

特徴
  • 静菌性
  • タンパク質合成阻害

細菌のタンパク質合成を阻害することで、細菌の増殖を抑える薬です。
薬剤の作用持続時間により、短時間作用型、中等度作用型、長時間作用型に分けられます。

一般的な細菌感染症に処方されるケースは多くはありませんが、マイコプラズマやクラミジアにはよく効きます。

テトラサイクリン系の一般的な薬
・ビブラマイシン(有効成分:ドキシサイクリン塩酸塩水和物)
・ミノマイシン(有効成分:ミノサイクリン塩酸塩)
・アクロマイシン(有効成分:テトラサイクリン塩酸塩)
商品名 Divaine(ミノマイシンジェネリック) アカミン(ミノマイシン) ミノマイシン・ジェネリック ビブラマイシン モノドクス(ビブラマイシンジェネリック)
画像 Divaine(ミノマイシンジェネリック) アカミン(ミノマイシン) ミノマイシン・ジェネリック ビブラマイシン モノドクス(ビブラマイシンジェネリック)
有効成分 ミノサイクリン ミノサイクリン ミノサイクリン ドキシサイクリン塩酸塩水和物 ドキシサイクリン塩酸塩水和物
特徴 「ミノマイシン」のジェネリック医薬品 「ミノマイシン」のジェネリック医薬品 「ミノマイシン」のジェネリック医薬品 ファイザー社が開発した先発薬「ビブラマイシン」 「ビブラマイシン」のジェネリック医薬品
価格 10錠:1,420円~ 60錠:2,850円~ 100カプセル:14,250円~ 24錠:3,200円~ 14錠:2,300円~
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代表的な疾患

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ホスホマイシン系

特徴
  • 殺菌性
  • 細胞壁合成阻害

新しい系統の抗生物質で、細菌の細胞壁の合成を初期段階で阻害することで、細菌を死滅させる薬です。
緑膿菌、プロテウス菌、緑膿菌、大腸菌などに有効とされています。

処方頻度は多くはありませんが、胃炎などの細菌性の下痢に多く用いられます。

ホスホマイシン系の一般的な薬
・ホスミシン(有効成分:日局ホスホマイシンカルシウム水和物)

代表的な疾患

膀胱炎、腎盂腎炎、感染性腸炎、結膜炎ものもらい、中耳炎

キノロン系(ニューキノロン)

特徴
  • 殺菌性
  • 核酸合成阻害

細胞の核酸の合成に関わる酵素を阻害することで、細菌を死滅させる薬です。
比較的新しい薬のため、耐性菌が少なく、さまざまな細菌に有効なのが特徴です。

副作用が少なく安全に使用することができます。
ただし、鎮痛剤との併用でけいれんを起こしやすいため、飲み合わせには注意しましょう。

キノロン系(ニューキノロン)の一般的な薬
・ジェニナック(有効成分:メシル酸ガレノキサシン水和物)
・アベロックス(有効成分:モキシフロキサシン塩酸塩)
・オゼックス(有効成分:トスフロキサシントシル酸塩水和物)
・シプロキサン(有効成分:シプロフロキサシン)
・クラビット(有効成分:レボフロキサシン水和物)
商品名 クラビリン クラビット点眼薬 シプロキサン・ジェネリック
画像 クラビリン クラビット点眼薬 シプロキサン・ジェネリック
有効成分 レボフロキサシン レボフロキサシン シプロフロキサシン
特徴 「クラビット」のジェネリック医薬品 「クラビット」の点眼薬 「シプロキサン」のジェネリック医薬品
価格 5錠:1,200円~ 1本:3,600円~ 30錠:2,700円~
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代表的な疾患

クラミジア咽頭クラミジア、マイコプラズマ、結膜炎ものもらい、尿路感染症、腸管感染症、呼吸器感染症、皮膚感染症

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子供にはどんな抗生物質を使用するか?

抗生物質が必要な子供の疾患として、以下のような疾患が挙げられます。

・溶連菌
・中耳炎
・副鼻腔炎
・とびひ
・マイコプラズマ感染症
・細菌性肺炎
・百日咳
・膀胱炎(尿路感染) など

薬物耐性の観点から、小児外来では抗生物質を限定して処方されています。

子供に使用される抗生物質は疾患によっても異なりますが、多くの症状の第一選択薬とされているのがペニシリン系のアモキシシリンです。

その他、アレルギーの有無や疾患によってセフェム系やマクラロイド系の抗生物質を使用することもあります。

また、風邪は原因のほとんどが細菌ではなくウイルス性なため、細菌による症状が疑われたときにのみ処方されます。

参考:抗微生物薬適正使用の手引き第二版|厚生労働省健康局結核感染症課

抗生物質の種類を変更していいのか?

抗生物質が効かない場合は、以下のような原因が考えられます。

・服用して間もなく効果がまだ現れていない
・細菌が効かない抗生物質を使用している
・細菌感染症以外の疾患にかかっている
・細菌が抗生物質に耐性をもっている

服用して間もない場合を除き、何らかの原因がある場合は医薬品を変える必要があります。

抗生物質は種類も多く自己判断は難しいため、服用して数日経過しても改善の傾向が見られない場合は医師に相談しましょう。

まとめ

抗生物質は、殺菌性・静菌性の他にも作用別に多くの種類があります。
症状にあった抗生物質を使用することで細菌性の感染症を治療することが可能です。

基本的に、医師の処方で入手ができますが、個人輸入でも購入できる抗生物質があります。
使用の際は、必ず用法を守って服用しましょう。

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