海外では、経口中絶薬による人工妊娠中絶の方法が存在します。
現在、日本では行われていない方法ですが、厚生労働省が国内承認に向けて審議するというニュースが話題になっています。
経口中絶薬の「通販」や「個人輸入」にも注目が集まっており、実際に通販や個人輸入で経口中絶薬を購入できるのか調査しました。
アフターピルとの違いや注意点も解説します。
経口中絶薬が国内承認へ
厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会は1月27日、国内初の経口投与の人工妊娠中絶薬・メフィーゴパック(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール、申請者:ラインファーマ)を承認することを了承した。ただ、厚労省は、メフィーゴは社会的関心が高く、より慎重な審議を行う必要があると判断し、パブリックコメント手続きを実施した後、パブコメの結果も参考に薬食審・薬事分科会で再度審議することにした。
パブコメでの意見募集期間は2月1日~28日を予定。メフィーゴの薬事分科会での審議は早ければ3月に行い、承認して差し支えないと判断された場合、今春にも正式承認される見通し。
薬事・食品衛生審議会の専門部会で、厚生労働省は経口中絶薬(飲む中絶薬)の国内承認を了承しました。
申請された経口中絶薬は、「メフィーゴパック」で、イギリスの製薬会社ラインファーマが開発した薬です。
医薬品部会は通過しており、パブリックコメントを審議したのち正式承認される予定です。
早ければ2023年春ごろに承認される見通しで、人工妊娠中絶の方法の選択肢のひとつになります。
経口中絶薬について
引用元:ラインファーマ
効果・効能 | 子宮内妊娠が確認された妊娠63日(妊娠9週)以下の者に対する人工妊娠中絶 |
---|---|
用量 | ミフェプリストン錠1錠(200mg) ミソプロストールバッカル錠4錠(計800μg) |
用法 | ①ミフェプリストン錠1錠経口投与 ②36~48時間後の状態に応じてミソプロストールバッカル4錠を左右の臼歯の歯茎と頬の間に2錠ずつ30分間静置 30分間静置後に錠剤が残った場合は飲み込む |
注意点 | 患者は入院または2回受診が必要 2剤とも院内で服用(2剤目服用後は入院または院内待機) |
「メフィーゴパック」は、イギリスの製薬会社ラインファーマが開発した薬です。
カナダやオーストラリアなどでは同等の経口中絶薬が使用されています。
メフィーゴパックに含まれる成分のうち、ミフェプリストンは黄体ホルモンの働きを抑制して妊娠継続を阻害、ミソプロストールには子宮収縮作用があります。
妊娠9週目までが対象で、従来の人工妊娠中絶手術とは異なり、薬を飲むだけで妊娠中絶が可能となります。
国内臨床試験データ
妊娠9週未満の18~45歳の女性を対象とした国内の臨床試験では、120例のうち93.3%がミソプロストール投与後24時間以内に中絶に成功しています。
ただし、下腹部痛や嘔吐といった副作用も確認されています。
妊娠63日(9週0日)以下の18歳から45歳の女性120例を対象にした国内第3相試験では、主要評価項目とされたミソプロストール投与後24時間までに人工妊娠中絶が成功した割合は93.3%だった。主な副作用は、下腹部痛 (30.0%)、嘔吐(20.8%)だった。
中絶薬とアフターピルとの違い
中絶薬 | アフターピル | |
---|---|---|
効果・効能 | 妊娠継続が不可能になり子宮収縮により子宮内容物を体外に排出 | 精子の着床を防ぎ妊娠を回避 |
服用タイミング | 妊娠成立後(着床後)~妊娠63日(妊娠9週)以下 | 妊娠成立前(着床前) ※性行為から72時間~120時間以内 |
成功率 | 92~98% | 99% ※24時間以内の服用の場合 |
経口中絶薬とアフターピルは、似ているようですが全くの別物です。
アフターピル:妊娠が成立する前に妊娠を防ぐ薬
妊娠発覚後は中絶薬、避妊に失敗した可能性がある場合はアフターピルを使用します。
服用のタイミングや対象者が異なるため、注意が必要です。
メリット・デメリット
中絶薬 | アフターピル | |
---|---|---|
メリット | 手術不要 | 通販可能 |
デメリット | 病院のみ | 72時間~120時間以内の服用が必要 |
中絶薬とアフターピルのメリット・デメリットは、上記の通りです。
中絶薬は、手術不要で中絶可能ですが、病院のみの取り扱いとなる予定です。
アフターピルであれば、通販などでも購入可能ですが、制限時間があるのがデメリットとなっています。
副作用の違い
中絶薬 | アフターピル | |
---|---|---|
副作用 | ・頭痛 ・腹痛、腰背痛 ・下痢 ・吐き気 ・出血 ・発熱、悪寒 ・めまい |
・頭痛 ・吐き気 ・乳房の張り ・倦怠感 ・眠気 ・胃腸障害 ・不正子宮出血 |
中絶薬とアフターピルは、いずれも子宮や女性ホルモンに作用するため、副作用は似ている部分もあります。
ただし、中絶薬は子宮からの大量出血や感染症などの重篤な副作用のリスクがあります。
また、アフターピルは生理周期が乱れる可能性があります。
避妊に失敗したかもと思ったらアフターピル
アフターピルは中絶薬とは異なるため、妊娠成立後にアフターピルを服用しても効果はありません。
避妊に失敗した可能性がある場合は、原則72時間以内にアフターピルを服用してください。
アフターピルは、通販でも購入可能ですが、服用には時間の制限があるため病院処方の方が確実です。
また、低用量ピルには避妊効果があるため、必要に応じて低用量ピルも検討しましょう。
中絶薬は通販で購入できるのか?
日本国内では経口中絶薬の輸入が規制されているため、通販や個人輸入では購入できません。
ただし、「医師の処方に基づくことが地方厚生局で確認できた場合に限って輸入が可能」とされています。
重度の副作用の危険性があり医師による経過観察が必要なため、医師の許可なしに入手することはできません。
参考:厚生労働省医薬食品局「個人輸入される経口妊娠中絶薬(いわゆる経口中絶薬)について」
個人輸入制限がかかっている中絶薬の商品名
個人輸入の規制対象となっている中絶薬は、次の通りです。
一般名 | ミフェプリストン(Mifepristone) |
---|---|
販売名 | (EU)ミフェジン(Mifegyne) |
(米国)ミフェプレックス(Mifeprex) | |
(中国)息隠(米非司酉同片) | |
(台湾)保諾(Apano) |
※開発時の名称である「RU486」とも呼ばれている。
一般名 | ミソプロストール(Misoprostol) |
---|---|
販売名 | (インド)Miso-Kare Misoprostol Tablets IP 200 mcg |
(インド)A-Kare Combipack o f Mifepristone Tablets IP & Misoprostol Tablets IP | |
(インド)Misoprost-200 |
販売国によって商品名は異なりますが、いずれもメフィーゴパックの成分であるミフェプリストンとミソプロストールです。
中絶薬を通販しているサイトは要注意
厚生労働省によって個人輸入制限がかかっているため、本来は通販で購入できませんが、通販で取り扱っているサイトが存在します。
中絶薬の通販(個人輸入)は違法であり、危険性が高いため絶対に利用しないでください。
詐欺の可能性
注文が成立しても、商品が届かない場合や連絡がつかない場合など、通販業者を装った詐欺の可能性があります。
個人情報を盗まれたり悪用されたりする恐れがあるため、登録・注文しないよう注意してください。
偽物の可能性
中絶薬は、医師の処方なしに輸入することはできません。
そのため、商品が届いたとしても正規品ではなく、偽物や粗悪品である可能性があります。
違法ルートで入手した中絶薬によって、命に関わる重篤な副作用や思わぬ健康被害を引き起こしても救済制度の対象にはなりません。
堕胎の罪の可能性
母体保護法では、指定医以外の者が薬物などで堕胎する行為は禁じられています。
通販で購入した中絶薬が本物だったとしても、指定医が処置していない場合は法律に抵触するため、個人の判断で服用してはいけません。
まとめ
経口中絶薬の国内承認に向けた動きが本格化していますが、指定医の処置が必須なため、承認後も通販や市販で購入することはできません。
指定医がいる病院で、本人や配偶者の同意を得て使用することになるでしょう。
アフターピルや低用量ピルなどの避妊薬は個人輸入の制限がないため、通販で購入可能です。
妊娠を望まない場合は、ピルや避妊具で適切な避妊をおこなうことが大切です。