「さっき食事をしたばかりなのにお腹が空いてしまう」「最近間食の回数が増えている」という経験はありませんか。
もしかしたらこの現象は、血糖コントロール不良や糖尿病によるものかもしれません。
近年では、生活習慣の乱れやストレスなどが原因で血糖コントロールがうまくいかず、満腹感が持続しないと感じる方も増えています。
本記事では、食後の空腹感が糖尿病に関係している可能性について詳しく解説していきます。
食べたばかりなのにお腹がすく原因
食後すぐに空腹を感じる原因は、以下によるものと考えられます。
次の項目で、4つの原因について詳しく解説します。
糖尿病の可能性
糖尿病の方が食後すぐにお腹がすぐ原因は、以下2つのメカニズムによるものです。
・血糖値の急激な変動
インスリンは、食事から摂取した糖の代謝をコントロールして、血糖値を一定に保つ働きをします。
しかし、インスリンが不足すると糖が筋肉や細胞に取り込まれにくくなり、体はエネルギー不足と判断してしまいます。
これにより、脳がもっと食事をするように信号を送るため、空腹を感じてしまうのです。
また、食事によって血液中のブドウ糖が増加すると血糖値が急上昇し、インスリンが大量に分泌されます。
インスリンにより血糖値が急激に下がることで、お腹が空いたと感じやすくなります。
妊娠糖尿病の可能性
妊娠中は、胎盤から分泌されるホルモンの働きによりインスリンの効きが悪くなるため、高血糖になりやすいです。
血糖値の基準値「空腹時92mg/dL以上」「1時間値180mg/dL以上」「2時間値153mg/dL以上」いずれかを満たすと妊娠糖糖尿病と診断されます。
妊娠後期に発症するケースが多く、高血糖によるエネルギー不足という誤認によって、食後すぐに空腹を感じやすくなります。
高血糖状態が続くと胎児へ悪影響を及ぼす恐れがあるため、しっかりと妊娠検診を受け、いち早く病気に気付くことが重要です。
食事内容の問題
食後間もなくの空腹感は、食事内容に問題がある可能性があります。
炭水化物などGI値の高い食品を中心に摂取することで、血糖値が急上昇しインスリンが大量に分泌されます。
インスリンの働きによって血糖値は急降下するため、食後すぐに空腹を感じてしまうのです。
GI値とは血糖値に与える影響を数値化したものであり、GI値の高い食品は主に以下があげられます。
・精白米
・食パン
・もち
・うどん
・ジャガイモ
・ニンジン
また、満腹感を持続させるタンパク質や脂質の摂取が足りていない可能性があるため、食事内容を見なおすことが大切です。
睡眠不足やストレス
睡眠不足やストレスが、食後の空腹につながる可能性があります。
睡眠が不足すると食欲と代謝を調整する「レプチン」という物質が減少するとともに、食欲を増進させる「グレリン」という物質が増加します。
これにより空腹感が強まるため、食事をしても満腹感が得られず食べた後もすぐにお腹が空いてしまうのです。
ある調査では、睡眠不足が慢性化することで空腹時の血糖値が上昇し、インスリン分泌量が低下することがわかっています。
また、ストレスを受けると血糖値を上昇させるホルモン「コルチゾール」が分泌されるだけでなく、インスリン抵抗性も強まります。
糖尿病の症状チェック
糖尿病は初期段階では自覚症状が出にくく、気付くまでに時間がかかり放置されるケースも少なくありません。
糖尿病の症状をいくつかご紹介しますので、気になる症状が出ていないかセルフチェックをしてみてください。
多尿
多尿とは、1日の尿量が2.5リットル以上である状態を指します。
糖尿病により血液中のブドウ糖が増えすぎると、腎臓がブドウ糖を尿とともに排出しようと働くため、排尿回数や量が増加します。
また、病状が進行すると排尿を調節する末梢神経にも障害が現れ、膀胱機能のコントロールが難しくなり多尿になります。
尿量が増えることで脱水状態が続くと、糖尿病ケトアシドーシスなどの合併症を起こすこともあるため、注意が必要です。
のどの渇き
糖尿病の代表的な症状で、のどの渇きがみられます。
血液中の糖の濃度が高くなることで細胞内の水分が不足して、細胞や口の粘膜が脱水状態になり唾液を作るための水分が足らなくなります。
これにより、通常以上にのどが渇いて大量に水分を摂取するようになります。
また、尿量を増やすために体内の水分が大量に使われ、脱水状態になることからのどが異常に乾くようになるのです。
水分を摂ってものどの渇きが収まらない場合は、糖尿病の可能性もあるため早めに診察を受けましょう。
倦怠感
体を動かすために必要なエネルギー源であるブドウ糖をうまく取り込めなくなると、エネルギー不足になり倦怠感が現れます。
これは、糖尿病により膵臓でのインスリン分泌量の減少や、インスリンの効きが悪くなるために起こる症状です。
活動に必要なエネルギーが足りなくなるため、体がだるくなったり疲れやすくなったりします。
また、糖尿病性神経障害や糖尿病性腎症などの合併症により、疲労を感じやすくなっている恐れもあります。
体重減少
糖尿病と聞くと肥満の方がなりやすい病気というイメージがありますが、病状が進行すると急激に体重が減少します。
糖を細胞内に取り込めなくなると、脳がエネルギー不足と判断して食事をするように指令を出します。
しかし、どれだけ食べてもエネルギーを吸収できないため、次に体脂肪を使うように指令が出され始めます。
食べた物は吸収されずに排出されしまうため、使われた脂肪分を新たに溜めることができずに、体重が減少していくのです。
医療機関での検査
医療機関では、血液検査の結果で診断されるのが一般的です。
血液検査による空腹時の血糖値、HbA1cの値で、高血糖値が慢性的なものであるかを判断します。
正常値:70〜140mg/dL
糖尿病予備軍:100~109mg/dL
糖尿病の可能性が高い:126mg/dL以上
正常値:5.5%以下
糖尿病予備軍:6.0~6.4%
糖尿病の可能性が高い:6.5%以上
血糖値、HbA1cいずれかの数値のみでの判断は困難ですが、同日の検査で空腹時の血糖値126mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上である場合は糖尿病と診断されます。
糖尿病の治療薬
糖尿病の治療薬には、作用メカニズムが異なるさまざまな種類の医薬品があります。
ここから、代表的な5つの治療薬の特徴と効果について解説します。
メトホルミン
ゾメット | ||
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100錠:4,000円 | ||
成分 | メトホルミン | |
効果 | 2型糖尿病の改善 | |
副作用 | 肝臓機能障害、消化器障害、発疹、代謝異常、頭痛など |
ゾメットは、メトホルミンを主成分とするメトグルコのジェネリック医薬品です。
肝臓での糖新生を抑制する働きで、血糖値の急上昇を防いで空腹時の血糖値を安定させます。
また、インスリンの効き目を高めることで筋肉や脂肪での糖吸収をサポートして、血糖値を下げる働きもします。
メトホルミンの安全性と有効性は国際的にも認められ、欧米では糖尿病の第一選択薬として使用されています。
アマリール
アマリール | ||
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30錠:2,400円 | ||
成分 | グリメピリド | |
効果 | 2型糖尿病の改善 | |
副作用 | 便秘、腹痛、下痢、発疹、めまいなど |
アマリールはグリメピリドを主成分とし、インスリン分泌を促す作用を持つ医薬品です。
膵臓に作用してインスリンの分泌量を増加させるとともに、インスリンの効き目を高めて血糖値の急上昇を抑えます。
従来のスルホニル尿素(SU)剤に比べると作用は穏やかですが、インスリンの効き目を高める作用によって同等の血糖降下作用を発揮できます。
また、膵臓への負担と体重増加、低血糖などの副作用が軽減されているのが特徴です。
フォシーガ
フォシーガ | ||
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14錠:4,000円 | ||
成分 | ダパグリフロジン | |
効果 | 糖尿病治療、ダイエット、体重減少 | |
副作用 | 便秘、頻尿、口の渇きなど |
フォシーガは、ダパグリフロジンを有効成分とするSGLT-2阻害薬です。
腎臓にある物質「SGLT-2」の働きを阻害することで、ブドウ糖の再吸収を妨げて余分な糖を体外に排出して血糖値を下げます。
インスリン分泌には影響を与えないため、低血糖を起こしにくいのが特徴です。
また、フォシーガは1日に200~500kcalほどの糖を排出できるため、むくみ解消やダイエット効果も期待できます。
さらに、腎臓や心臓への負担も軽減されることから、慢性腎臓病や心不全などの治療にも役立ちます。
アクトス
アクトス | ||
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28錠:2,700円 | ||
成分 | ピオグリタゾン | |
効果 | 2型糖尿病の改善 | |
副作用 | 浮腫、貧血、血圧上昇、動悸、発疹など |
アクトスは、ピオグリタゾンを主成分とするインスリンの感受性を高める医薬品です。
インスリン抵抗性を改善し、筋肉など末梢組織での糖の取り込みと利用を促すことで血糖値を降下させます。
また、インスリン感受性が高まり肝臓での糖新生が抑制されることで、空腹時の血糖値が安定します。
長期的な服用でも作用が弱まることはないため、安定した血糖コントロールを得られるのが特徴です。
ジャヌビア
ジャヌビア | ||
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28錠:6,500円 | ||
成分 | シタグリプチン | |
効果 | 2型糖尿病の改善 | |
副作用 | めまい、動悸、鼻咽頭炎、腹痛、悪心など |
ジャヌビアは、シタグリプチンを主成分とするDPP-4阻害薬です。
血糖を一定に保つホルモン「インクレチン」を分解する「DPP-4」の働きをブロックする役割を果たします。
インクレチンの働きが高まりインスリンの分泌が促されることで、血糖値の急上昇を抑えられます。
高血糖状態でのみインスリンの分泌を促進するため、低血糖になるリスクが軽減されているのが特徴です。
空腹感を抑える対策
糖尿病かどうかにかかわらず、食べたばかりなのにお腹が空いてしまう場合には、空腹感を抑える対策が必要です。
次の項目では、すぐに実践できる4つの対策法をご紹介します。
食事を改善する
食後の空腹を感じさせないためには、血糖値の急上昇を抑えて満腹感を持続させることが大切です。
大豆食品、キノコ類、サツマイモ、そばなどGIが低い食品を積極的に摂ることで、血糖値の急激な変動が抑えられます。
炭水化物、脂質、タンパク質をバランスよく摂取することで、血糖値の急激な変動が抑えられ、空腹を感じにくくなります。
また、食物繊維やタンパク質は消化に時間がかかるため満腹感が持続します。
「ベジファースト」を意識することで、糖質の吸収をコントロールできます。
野菜類(食物繊維)→おかず(タンパク質)→ごはん(炭水化物)の順番で食べるように心がけましょう。
おすすめの食品
空腹を抑えられるためには、低カロリーかつ満足感のある食品を選ぶことが大切です。
・鶏肉
・魚
・豆腐
・アーモンド
・サツマイモ
・ギリシャヨーグルト
・バナナ など
もちろん食べすぎには注意する必要がありますが、これらの食品を摂ることで血糖値の急上昇が抑えられ空腹感が紛れます。
適度な運動をする
適度な運動は、空腹のサインを抑える効果があります。
運動すると、交感神経が優位になり神経伝達物質であるアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンは血糖値を高める作用があるため、空腹を感じた時に軽く運動をすると空腹感が和らぎます。
空腹を感じた場合には、手軽に取り入れられる有酸素運動がおすすめです。
・その場足踏み
・スクワット
・ウォーキング
・ストレッチ
・縄跳び など
適度な運動を習慣化することで血糖値をうまくコントロールでき、健康的に空腹感を調節できるようになります。
ストレスを発散する
日常生活の中で、人は誰しもが少なからずストレスを抱えているものです。
ストレスを受けるとレプチンの働きが弱まるといわれており、満腹中枢を正常に刺激できなくなってしまいます。
ストレスにより空腹が強まっている可能性もあるため、ストレスを発散して心も体もリラックスさせることが大切です。
ストレスが溜まっていると感じたら、以下の発散方法を試してみてください。
・友人との時間を楽しむ
・一人でのんびりする時間を作る
・部屋を掃除して環境を変化させる
・ゆっくり湯船に浸かる
・しっかりと睡眠時間を確保する
糖尿病を放置すると?
糖尿病の治療をせずに放置すると動脈硬化が進行し、以下の三大合併症を引き起こす恐れがあります。
└目の網膜の毛細血管が傷つき、失明する恐れもある
└血流悪化による神経障害がみられ、全身性の感染症や下肢の切断をしなければいけない場合がある
└腎臓に障害がみられ、進行すると透析や腎移植が必要になる場合もある
糖尿病は自覚症状が少なく、気づかぬうちに進行して合併症を引き起こしているという可能性もあります。
合併症は一度発症すると、進行を抑えたり症状を和らげたりすることはできますが、完治させるのは難しくなります。
そのため、糖尿病と診断されたら適切な治療を受け、血糖値をコントロールして予防することが大切です。
まとめ
食後すぐにお腹が空いてしまうのは、睡眠不足やストレスなど生活習慣の乱れも考えられますが、糖尿病の初期症状の可能性があります。
食後の空腹以外にも、今回紹介した糖尿病の症状がみられる場合は、早めに診察を受けることをおすすめします。
糖尿病は早期発見・早期治療が重要な病気であるため、症状に適した治療薬を使用しながら良好な血糖コントロールを目指しましょう。
また、生活習慣の見直しやストレス発散など、健康的な生活を送ることも治療のサポートにつながります。