「ステロイドは様々な種類があるが、強いのはどれだろう?」
「自身の症状に合った強さのステロイドはどれ?」
ステロイド使用にあたって、上記のような疑問を感じたことがある方もいるのではないでしょうか。
本記事ではそんな疑問を解決するために、ステロイド軟膏の強さランキングや選び方を解説していきます。
ステロイド軟膏の強さランキング
ステロイド軟膏には様々な種類があり、以下のように効果の強さがランク分けされています。
本記事では最新のガイドラインなどを参考に、5つのランクのステロイドを詳しく解説します。
※参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021|日本皮膚科学会
1位:ストロンゲスト
ステロイド軟膏の強さランキング1位は”ストロンゲスト”ランクです。
5段階あるステロイドの中で最も効果が高く、炎症が非常にひどい場合や炎症範囲が狭い場合、手足のなかなか治らない炎症に対して使用されます。
市販はされておらず、病院処方か個人輸入でしか購入できません。
クロベタゾールプロピオン酸エステル
デルモベートクリーム 1本:3,150円~ |
|
代表的な医薬品名 | デルモベート |
---|---|
有効成分 | クロベタゾールプロピオン酸エステル |
効果 | 湿疹、痒疹群、皮膚炎群、虫さされ、薬疹、肉芽腫症、紅皮症など |
副作用 | まぶたへの使用による緑内障、白内障、眼圧亢進 / 真菌症、ステロイド皮膚、多毛、蕁麻疹など |
入手方法 | 病院処方、個人輸入 |
クロベタゾールプロピオン酸エステルを含むステロイドとして、「デルモベート」が挙げられます。
その強さはフルコート軟膏の18.7倍、リンデロンV軟膏の5.2倍ともいわれており、皮膚の薄い顔や陰部への使用は推奨されていません。
ジフロラゾン酢酸エステル
ダイアコート | |
取り扱いなし |
代表的な医薬品名 | ダイアコート、ジフラール |
---|---|
有効成分 | ジフロラゾン酢酸エステル |
効果 | 湿疹、痒疹群、乾癬、皮膚炎群、特発性色素性紫斑、薬疹、肉芽腫症、紅皮症など |
副作用 | まぶたへの使用による緑内障、白内障、眼圧亢進 / 真菌症、ステロイド皮膚、多毛、蕁麻疹、ニキビの悪化など |
入手方法 | 病院処方 |
「ダイアコート」や「ジフラール」の医薬品名で有名な効果の強いステロイドです。
ベリーストロング以下で効かない重度のアトピーや皮膚炎、ケロイドなどに使用されます。
2位:ベリーストロング
ステロイド軟膏の強さランキング2位は”ベリーストロング”ランクです。
・モメタゾンフランカルボン酸エステル(フルメタ)
・ジフルコルトロン吉草酸エステル(テクスメテン、ネリゾナ)
・ジフルプレドナート(マイザー)
・酪酸プロピオン酸ベタメタゾン(アンテベート、サレックス)
・フルオシノニド(トプシム)
・アムシノニド(ビスダーム)
・酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(パンデル)
・ベタメタゾン吉草酸エステル(リンデロン-DP)
ストロンゲストランクに続いて効果の高いステロイドで、慢性的に症状が続いている場合や迅速に治療したい場合に使用されます。
ベリーストロングもストロンゲストと同じく、市販品はなく病院での処方か個人輸入でしか購入できません。
本記事では、代表的な以下のステロイドを取り上げて詳しくご紹介します。
・モメタゾンフランカルボン酸エステル(フルメタ)
・ジフルコルトロン吉草酸エステル(テクスメテン、ネリゾナ)
・ジフルプレドナート(マイザー)
モメタゾンフランカルボン酸エステル
モメタゾン(フルメタ) 1本:1,900円~ |
|
代表的な医薬品名 | フルメタ |
---|---|
有効成分 | モメタゾンフランカルボン酸エステル |
効果 | 湿疹、痒疹群、皮膚炎群、ケロイド、円形脱毛症、痒疹群、中毒疹など |
副作用 | まぶたへの使用による緑内障、白内障、眼圧亢進 / 真菌症、ステロイド皮膚、多毛、蕁麻疹など |
入手方法 | 病院処方、個人輸入 |
「フルメタ」や「モメタゾンフランカルボン酸エステル軟膏」の医薬品名で有名なモメタゾンフランカルボン酸エステルを含むステロイドです。
ハロゲン系ステロイドで局所的な作用が強く、成分の吸収率が高い顔や陰部への使用は医師の指示がない限りやめた方がよいでしょう。
ジフルコルトロン吉草酸エステル
代表的な医薬品名 | ネリゾナ、テクスメテン |
---|---|
有効成分 | ジフルコルトロン吉草酸エステル |
効果 | 湿疹、痒疹群、皮膚炎群、ケロイド、円形脱毛症、痒疹群、中毒疹など |
副作用 | まぶたへの使用による緑内障、白内障、眼圧亢進 / 真菌症、ステロイド皮膚、多毛、蕁麻疹など |
入手方法 | 病院処方、個人輸入 |
「ネリゾナ」や「テクスメテン」の医薬品名で有名なジフルコルトロン吉草酸エステルを含むステロイドです。
ネリゾナ軟膏の臨床試験では、多くの症状に有効であることが報告されています。
・湿疹・皮膚炎:87%
・乾癬:87%
・掌蹠膿疱症:68%
・痒疹:64%
・紅皮症:71%
フルメタ同様、顔や陰部など皮膚の薄い箇所には一般的に使用されません。
ジフルプレドナート
マイザー | |
取り扱いなし |
代表的な医薬品名 | マイザー |
---|---|
有効成分 | ジフルプレドナート |
効果 | 湿疹、痒疹群、皮膚炎群、ケロイド、円形脱毛症、痒疹群、中毒疹など |
副作用 | まぶたへの使用による緑内障、白内障、眼圧亢進 / 真菌症、ステロイド皮膚、多毛、蕁麻疹など |
入手方法 | 病院処方 |
「ジフルプレドナート」を含むマイザーは、ベリーストロングランクの中では処方されることの多いステロイドです。
2019年の日経メディカルの調査によると処方率は31.6%でした。
フルメタ同様、顔や陰部など皮膚の薄い箇所には一般的に使用されません。
3位:ストロング
ステロイド軟膏の強さランキング3位は”ストロング”ランクです。
・デプロドンプロピオン酸エステル(エクラー)
・デキサメタゾン吉草酸エステル(ボアラ、ザルックス)
・ベタメタゾン吉草酸エステル(0.12%)(ベトネベート、リンデロンV)
・フルオシノロンアセトニド(フルコート)
・プロピオン酸デキサメタゾン(メサデルム)
・ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(ベクラシン、プロバデルム)
・ハルシノニド(アドコルチン®)
抗炎症作用は病院での処方が基本となるストロンゲストやベリーストロングに劣りますが、副作用のリスクや皮膚への刺激もその分低くなっています。
また、ストロングランク以下の強さのステロイドは、種類によっては市販されています。
本記事では、代表的な以下のステロイドを取り上げて詳しくご紹介します。
・ベタメタゾン吉草酸エステル(0.12%)(ベトネベート、リンデロンV)
・プロピオン酸デキサメタゾン(メサデルム)
ベタメタゾン吉草酸エステル
商品名 | ベタメタゾンクリーム | ベトノベートGMスキンクリーム |
---|---|---|
画像 | ||
価格 | 1本:1,800円~ | 1本:1,520円~ |
有効成分 | ベタメタゾン吉草酸エステル、フラジオマイシン | ベタメタゾン吉草酸エステル、ゲンタマイシン、ミコナゾール |
ボタン |
代表的な医薬品名 | ベトネベート、リンデロンV |
---|---|
有効成分 | ベタメタゾン吉草酸エステル |
効果 | 湿疹、痒疹群、皮膚炎群、ケロイド、円形脱毛症、痒疹群、中毒疹など |
副作用 | まぶたへの使用による緑内障、白内障、眼圧亢進 / 魚鱗癬様皮膚変化、ステロイド酒さ、過敏症、蕁麻疹など |
入手方法 | 病院処方、個人輸入、市販 |
「リンデロン-V」「ベトネベート」などの医薬品名で有名なステロイドです。
同じくベタメタゾン吉草酸エステル0.12%を含有する市販品として、リンデロンVsやベトネベートがあります。
プロピオン酸デキサメタゾン
メサデルム | |
取り扱いなし |
代表的な医薬品名 | メサデルム |
---|---|
有効成分 | プロピオン酸デキサメタゾン |
効果 | 湿疹、痒疹群、皮膚炎群、ケロイド、円形脱毛症、痒疹群、中毒疹など |
副作用 | まぶたへの使用による緑内障、白内障、眼圧亢進 / 魚鱗癬様皮膚変化、ステロイド酒さ、過敏症、蕁麻疹など |
入手方法 | 病院処方 |
「メサデルム軟膏」「デキサメタゾンプロピオン酸エステル軟膏」などの医薬品名で有名なステロイドです。
国内の臨床試験では、皮膚疾患に対し85.4%の有効率があることが分かっており、湿疹や炎症をはじめ虫さされ、薬疹、乾癬など幅広い症状に効果が期待できます。
4位:ミディアム
ステロイド軟膏の強さランキング4位は”ミディアム”ランクです。
・プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(リドメックス)
・トリアムシノロンアセトニド(レダコート、アフタシール)
・アルクロメタゾンプロピオン酸エステル(アルメタ)
・クロベタゾン酪酸エステル(キンダベート)
・ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド)
・デキサメタゾン(グリメサゾン)
ミディアムランクも処方薬に加えて、種類によっては市販されています。
症状がそれほど強くない時や敏感肌の方、子供に対して使用するのが適しています。
本記事では、代表的な以下のステロイドを取り上げて詳しくご紹介します。
・トリアムシノロンアセトニド(レダコート、アフタシール)
・ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド)
トリアムシノロンアセトニド
アリストコート(アフタシール) 1本:2,700円~ |
|
代表的な医薬品名 | レダコート、アフタシール、ノギロンなど |
---|---|
有効成分 | トリアムシノロンアセトニド |
効果 | 湿疹、痒疹群、皮膚炎群、熱傷、凍瘡、虫刺され、中毒疹など |
副作用 | まぶたへの使用による緑内障、白内障、眼圧亢進 / 魚鱗癬様皮膚変化、ニキビや吹き出物、多毛、発疹など |
入手方法 | 病院処方、個人輸入 |
「レダコート」「アフタシール」「ノギロン」などの医薬品名で有名なステロイドです。
軽度な症状から、顔などの皮膚の薄い部分にも使用できます。
ヒドロコルチゾン酪酸エステル
ロコイド | |
取り扱いなし |
代表的な医薬品名 | ロコイド |
---|---|
有効成分 | ヒドロコルチゾン酪酸エステル |
効果 | 湿疹、乾癬、痒疹群、皮膚炎群(脂漏性皮膚炎含む)など |
副作用 | まぶたへの使用による緑内障、白内障、眼圧亢進 / 魚鱗癬様皮膚変化、ニキビや吹き出物、ステロイド酒さ、発疹など |
入手方法 | 病院処方、市販 |
「ロコイド軟膏」などの医薬品名で有名なヒドロコルチゾン酪酸エステルは、赤みやかゆみなど炎症性の皮膚炎に対して、皮膚科で最初に処方されることの多いステロイドでもあります。
処方薬の成分濃度は0.1%ですが、市販品では同じ成分を0.05%で含む外用薬が販売されています。
ウィーク
ステロイド軟膏の強さランキング5位は”ウィーク”ランクです。
最も弱いタイプのステロイドで、皮膚のデリケートな部分(副作用の出やすい箇所)や乳幼児、高齢者などに使用されるケースが多いです。
刺激が少ないため、顔や目の周り、陰部など皮膚が薄い部分にも使用することができます。
本記事では、ウィークのステロイド「プレドニゾロン」について詳しく解説します。
プレドニゾロン
プレドニゾロンクリーム 1本:1,900円~ |
|
代表的な医薬品名 | プレドニゾロン |
---|---|
有効成分 | プレドニゾロン |
効果 | 湿疹、乾癬、痒疹群、皮膚炎群(脂漏性皮膚炎含む)、目の周辺のかゆみや赤み、はれをおさえる、結膜炎、ブドウ膜炎、角膜炎など |
副作用 | 魚鱗癬様皮膚変化、ニキビや吹き出物、ステロイド酒さ、発疹など |
入手方法 | 病院処方、市販、個人輸入 |
非ハロゲン系ステロイドで、5種類の中でも最も弱いステロイドです。
軽度な症状や皮膚の薄い部位にも使用しやすい特徴があります。
ステロイド軟膏の選び方
ステロイドは強さのランクごとにさまざまな種類があるため、症状や重症度などに合わせて選ぶ必要があります。
ここでは、症状に合わせた選び方を解説します。
重症の場合
重症の場合は、ベリーストロングランクのステロイドを使用することが推奨されます。
重症とは、以下のような場合を指します。
・「苔癬化※1」、「紅斑※2」,「丘疹※3」が多い場合
・かさぶたや固まった膿が多い場合
・固いしこりが多くできている場合
商品名 | モメタゾン(フルメタ) | ネリゾナ軟膏 |
---|---|---|
画像 | ||
価格 | 1本:1,900円~ | 1本:3,600円~ |
有効成分 | モメタゾンフランカルボン酸エステル ※ベリーストロング |
ジフルコルトロン吉草酸エステル ※ベリーストロング |
ボタン |
また、ベリーストロングで改善が見られない場合は、さらに強いストロンゲストランクを使用するケースもあります。
※1 苔癬化:皮膚が分厚く硬くなっている状態(丘状、溝状になっている)
※2 紅斑:皮膚が赤くなっている状態
※3 丘疹:ぶつぶつ
中等症の場合
中等症の場合は、ストロングランクもしくはミディアムランクのステロイドを使用することが推奨されます。
中等症とは、軽度な皮膚の赤み、皮むけ、丘疹(ぶつぶつ)がある場合や、かさぶたや固まった膿が一部ある場合のことを指します。
商品名 | ベタメタゾンクリーム | ベトノベートGMスキンクリーム | アリストコート(アフタシール) |
---|---|---|---|
画像 | |||
価格 | 1本:1,800円~ | 1本:1,520円~ | 1本:2,700円~ |
有効成分 | ベタメタゾン吉草酸エステル、フラジオマイシン ※ストロング |
ベタメタゾン吉草酸エステル、ゲンタマイシン、ミコナゾール ※ストロング |
トリアムシノロンアセトニド ※ミディアム |
ボタン |
軽症の場合
軽症の場合は、ミディアム、ウィークランクのステロイドを使用することが推奨されます。
軽症とは、軽度な皮膚の赤み、皮むけ、肌の乾燥がある場合を指します。
商品名 | アリストコート(アフタシール) | プレドニゾロンクリーム |
---|---|---|
画像 | ||
価格 | 1本:2,700円~ | 1本:1,900円~ |
有効成分 | トリアムシノロンアセトニド ※ミディアム |
プレドニゾロン ※ウィーク |
ボタン |
また、乳幼児や子供に対して無理にステロイドのランクを下げる必要はありませんが、肌がデリケートで短い期間で効果が出やすいため、使用時には注意が必要とされています。
ステロイド軟膏を使用する際の注意
ここでは、ステロイド軟膏を使用する際の注意点について紹介していきます。
主に使用する部位別の注意点や使用中止する場合の注意点について解説します。
使用する部位
ステロイドは使用する部位によって、成分の吸収率が異なるため注意が必要です。
前腕の手のひら側の吸収率を1とした場合、吸収率の高い部位だと以下のような数値となります。
・頭部:3.5
・頸部:6.0
・陰嚢:42
上記のような吸収率が高い部位は副作用のリスクが高いため、長期的に連続で使用しないことが大切です。
また、顔や首、陰部に使う場合は基本的にミディアムランク以下が推奨されています。
使用中止する場合
ステロイドを長期間使用し症状が緩和してきた場合、すぐに使用をやめるのではなく徐々に使用頻度を減らしていくことが大切です。
使用を急にやめてしまうと副作用や再発のリスクがあります。特に、顔や陰部にステロイドを長期使用した場合に、突然やめてしまうと、紅斑、ぶつぶつなどが出てきてしまうケースがあります。
副作用が疑わしい場合は、医師に相談するとよいでしょう。
ステロイド軟膏に関するよくある質問
ここでは、ステロイド軟膏に関するよくある質問に対して、Q&A形式でお答えしていきます。
1番強いステロイド軟膏はどれですか?
ステロイド外用薬は複数種類がありますが、比較実験はされていないため最も強い薬を決めることは難しいというのが結論です。
ガイドラインのランク分けを踏まえると、ストロンゲストランクのデルモベート、ダイアコートが強い薬となっています。
ただしストロンゲストランクのステロイドは効果も副作用リスクも高いため、使用時は注意が必要です。
ステロイド軟膏はどれくらいの期間使用していいですか?
ステロイド軟膏を5~6日間使用しても症状が改善しない場合は、一度使用をやめて医師に相談するとよいでしょう。
ステロイドの長期間使用リスクには、皮膚が薄くなることによって毛細血管への守りが弱くなることが挙げられます。
この状態になると、皮膚を圧迫したり、少し伸ばしたりとわずかな刺激を与えるだけで、内出血や裂傷が発生してしまうようになります。その他、細胞性免疫機能が低下することで、細菌系の感染症にかかりやすくなります。
ステロイド軟膏は市販で購入できますか?
ステロイド軟膏はストロングクラス以下(ストロング、ミディアム、ウィーク)であれば、OTC医薬品として市販でも購入できます。
ベリーストロング以上の強さの場合は病院で処方を受けるか、個人輸入で購入する必要があります。
市販でステロイド軟膏を購入する場合は使用する部位や症状の重さ、使用する人の年齢などで強さを選びましょう。
まとめ
ここまで、ステロイド軟膏の強さランキングや選び方を紹介してきました。
強さランキングは以下の通りです。
2位:ベリーストロング
3位:ストロング
4位:ミディアム
5位:ウィーク
症状の重さや使用する部位に合わせて適切な強さのステロイドを使用するのが大切です。