「リレンザとタミフルって何が違うの?」
「抗インフルエンザ薬にはどんな種類があるの?」
抗インフルエンザ薬には様々な種類があり、それぞれの特徴や違いについて気になっている方も多いのではないでしょうか。本記事では抗インフルエンザ薬の種類と違いについてわかりやすく解説していきます。
抗インフルエンザ薬の種類
ここでは、抗インフルエンザ薬の種類とそれぞれの特徴について解説していきます。
抗インフルエンザ薬には、以下の5種類があります。
タミフル | リレンザ | イナビル | ラピアクタ | ゾフルーザ― | |
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一般名 | オセルタミビルリン酸塩 | ザナミビル水和物 | ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 | ペラミビル水和物 | バロキサビル マルボキシル |
投与方法 | 経口投与(錠剤) | 吸入(粉末剤) | 吸入(粉末剤) | 点滴 | 経口投与(錠剤) |
投与期間 | 1日2回、5日間 | 1日2回、5日間 | 1回 | 1回 | 1回 |
主な副作用 | 吐き気、腹痛、下痢など | 発疹、蕁麻疹、声がれなど | 下痢、蕁麻疹、吐き気など | 下痢、吐き気、嘔吐 | 出血(血便、鼻血、血尿など)、下痢など |
投与可能年齢 (医師推奨) |
全年齢(生後2週間以上) | 小児以上(吸入できる場合) | 小児以上(1回で全部吸入できる場合) | 全年齢(服用がむずしい場合など) | 小児以上(体重10kg以上確実に服用できる場合) |
予防投与 | 〇 | 〇 | 〇 | ✖ | 〇 |
詳細 |
タミフル
抗インフルエンザ薬の一つ目は、タミフルです。
服用から1~2日程度で解熱が期待できる薬です。
ドライシロップタイプとカプセルタイプの2つのタイプがあり、有効成分はオセルタミビルリン酸塩です。
体内でインフルエンザウイルスが増殖するのを抑制する効果があります。
乳幼児(生後2週目)~成人した大人まで幅広い年齢に対して用いることができるお薬で、対象となるのはインフルエンザA型とB型です。
インフルエンザにかかった際の治療に用いられる場合は保険適応ですが、予防を目的として飲む場合は保険適応外となります。
作用機序
前提として、インフルエンザウイルスが増殖する仕組みは以下の通りです。
2.細胞内で別の新たなウイルスが生成されて細胞の外へと出ていく
3.増殖
タミフルは抗インフルエンザ薬の中でもノイラミニダーゼ阻害薬に分類されるお薬です。
②ではノイラミニダーゼという酵素が必要になり、タミフルはそのノイラミニダーゼを阻害する作用があります。
この作用によりウイルス放出を阻害させ、増殖を抑える作用をあらわします。
タミフルの投与(服用)方法は以下の通りです。
・服用量:1回75mg(通常成人/体重37.5kg以上の子供)
・服用期間:5日間
タミフルは食事の影響を受けない薬です。
そのため食事のタイミングに左右されず服用することができます。※朝と夕のある程度定まった時間に服用する必要はあります。
また、服用開始はインフルエンザ発症後48時間以内でないと十分な効果が得られません。
副作用
タミフルの副作用は以下の通りです。
・下痢(頻度5.5%)
・嘔気(頻度3.9%)
上記の他、以下のような副作用がまれに発症します。
・ショック症状
・肺炎
・急性腎不全
また、タミフルの副作用に異常行動があると聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
詳しくは後述しますが、異常行動とタミフルの因果関係は現状不明となっています。
注意事項
タミフル服用にあたっての注意事項は以下の通りです。
・腎機能が悪い方は服用できない場合があるので、医師に相談する
・妊婦・過敏症の方、過去にアレルギー症状のあった方は服用できない
・小児・未成年が服用した場合は親が常に目をかける
・普段と違う行動がみられた際は服用を中止し医師に相談する
タミフルの異常行動について
タミフルは一時期、10代が服用した際に異常行動が見られるため、処方を差し控える勧告が政府によってなされていました。
しかし、現在では厚生労働省よりタミフルと異常行動の因果関係があるとは言えないとの報告があり、全年齢でタミフルが処方されています。
向いてる方
タミフルの服用は以下のような方に向いています。
・カプセルタイプorドライシロップタイプのため、吸引できない方におすすめです
・発症から48時間以内の方である必要があります
・予防として服用したい、持っておきたい
リレンザ
リレンザは服用開始から48時間以内で症状の改善が期待できます。
リレンザはインフルエンザの疾病期間を最大で2.5日短縮可能です。服用方法は粉末を専用の吸入器で吸入するタイプです。
タミフルと同じくインフルエンザのA型・B型に有効です。
5歳以上から使うことができるお薬です。
前述のタミフルと同じく予防で飲む場合には、保険が適用されません。全額自己負担です。
作用機序
リレンザの作用機序はタミフルと同じノイラミニダーゼ阻害剤タイプです。
以下のようにインフルエンザウイルスが増殖する過程の一部を阻害します。
2.細胞内で別の新たなウイルスが生成されて細胞の外へと出ていく
3.増殖
リレンザには上記増殖過程のうち、②のウイルス放出を阻害し増殖を抑える効果があります。
投与方法
リレンザの投与(吸入)方法は以下の通りです。
・服用量:1回2ブリスター
・服用期間:5日間
吸入の流れ
1.吸入器のカバーを開けて、トレーを出す
2.トレーを外し、薬の入ったディスクをセットする
3.トレーを吸入器に戻す
4.吸入器の蓋をあけ、垂直に立て、吸入口を咥える
5.思い切り勢いよく、深く薬を吸う
6.吸入口を離した後に3~5秒息を止める
7.鼻から息をはいて、ゆっくりと呼吸をする
8.ここまでの流れを2回行う
副作用
リレンザの副作用は以下の通りです。
・下痢(頻度0.1~1%)
・悪心(頻度0.1~1%)
・嘔吐(頻度0.1~1%)
・蕁麻疹(頻度0.1%未満)
・頭痛(頻度0.1%未満)
・口渇(頻度0.1%未満)
・耳鳴(頻度0.1%未満)
・動悸(頻度0.1%未満)
・発汗(頻度0.1%未満) など
上記の他、以下のような重大な副作用が頻度不明ですが、報告されています。
・呼吸困難
・中毒性表皮壊死融解症
注意事項
リレンザ服用にあたっての注意事項は以下の通りです。
・発疹や上半身の熱感などを感じた場合は服用をやめて、医師に相談する
・小児・未成年が服用した場合は親が常に目をかける
・普段と違う行動がみられた際は服用を中止し医師に相談する
・吸入口は清潔に保つ(カバーをする)
・吸入器を他の薬の服用に使用しない
向いてる方
リレンザの服用は以下のような方に向いています。
・吸入タイプのため、錠剤が苦手な方、粉末薬を水で飲むのが苦手な方に向いています
・発症から48時間以内の方である必要があります
・予防にも使用可能。その場合はインフルエンザ発症者と接触後1~5日以内に服用する
イナビル
イナビルはリレンザと同じく粉末を専用の吸入器で吸入して服用するタイプで、1回の使用で効果が期待できる薬です。
イナビルは乳幼児から大人まですべての年齢で使用可能で、対象となるのはインフルエンザA型とB型です。
また、タミフルやリレンザと同じく予防で飲む場合には、保険が適用されません。
作用機序
イナビルの作用機序はタミフル・リレンザと同じノイラミニダーゼ阻害剤タイプです。
以下のようにインフルエンザウイルスが増殖する過程の一部を阻害します。
2.細胞内で別の新たなウイルスが生成されて細胞の外へと出ていく
3.増殖
イナビルには上記増殖過程のうち、②のウイルス放出を阻害し増殖を抑える効果があります。
投与方法
イナビルの投与(吸入)方法は以下の通りです。
・服用量:1回40mg(10歳以上の子供/成人※10歳未満の子供は20mg)
1回の吸引で済むことが特徴です。
ただし1回の吸引が不安な場合は向いていないといえるので別の種類を検討しましょう。
予防としてイナビルを使用する際は、2回に分けて吸入するケースもあります。
副作用
イナビルの副作用は以下の通りです。
・肝臓のALT上昇(頻度0.5%)
・蕁麻疹(頻度0.5%未満)
・口内炎(頻度0.5%未満)
・めまい(頻度0.5%未満)
・白血球数増加(頻度0.5%未満)
・肝機能異常(頻度0.5%未満)
・紅斑(頻度不明)
・発疹(頻度不明)
・そう痒(頻度不明) など
上記の他、以下のような重大な副作用が頻度不明ですが、報告されています。
・呼吸困難
・気管支攣縮
・皮膚粘膜眼症候群
注意事項
イナビル服用にあたっての注意事項は以下の通りです。
・正しく吸入できない恐れがある方は、別のインフルエンザ薬を選択する
・普段と違う行動がみられた際(異常行動)は服用を中止し医師に相談する
・吸入口は清潔に保つ(カバーをする)
・吸入器を他の薬の服用に使用しない
向いてる方
イナビルの服用は以下のような方に向いています。
・1回で吸入が確実にできる方
・早くインフルエンザを治したい方
・吸入タイプのため、錠剤が苦手な方、粉末薬を水で飲むのが苦手な方に向いています
・予防にも使用可能。その場合はインフルエンザ発症者と接触後1~5日以内に服用する
ラピアクタ
ラピアクタはインフルエンザA型B型感染時に、経口投与が困難な場合などに使用される点滴静注です。
適応年齢は成人ですが、点滴の量を調整することで小さい子供でも使用できます。
タミフルやリレンザと異なり1回の点滴のみとなり、投与開始から解熱まではタミフルよりも優位に短かったと報告されています。
しかし小児では点滴が難しい場合などが多く、タミフルやリレンザの経口投与が困難な場合や、早急に解熱させたい場合などにラピアクタが使用されます。
作用機序
タミフル同様ノイラミニダーゼ阻害薬に分類され、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害する作用があります。
この作用でウイルスの増殖を抑えることができます。
投与方法
1回20~30分ほど点滴治療を行います。
小児:通常1日1回、10mg/kgを点滴(15分以上かける)
成人:通常1日1回、300mg投与(上限は600mg)
24時間以内に症状改善が期待でき、即効性に優れています。
副作用
ラピアクタで奉公されている副作用は以下の通りです。
・アナフィラキーショック(頻度不明)
・白血球、好中球現象(1~5%未満)
・急性腎障害(頻度不明)
・精神・神経症状、異常行動(頻度不明)
・黄疸、劇症肝炎、肝機能障害
・肺炎(頻度不明)
・出血性大腸炎(頻度不明)
・血小板減少(頻度不明)
・中毒性表皮壊死融解症(頻度不明)など
皮膚:発疹、湿疹、じん麻疹
消化器:下痢、悪心、嘔吐、腹痛、食欲不振
肝臓:蛋白尿、NAG上昇、BUN上昇
血液:リンパ球増加、好酸球増加、血小板減少
精神神経系:めまい、不眠
その他:血管痛、霧視、血中ブドウ糖増加、尿中血陽性、CK上昇、尿糖など
これら以外にも異常な症状が出た場合、医師に相談して下さい。
注意事項
抗インフルエンザウイルス薬の使用の愉無や種類に関わらず、インフル感染時に異常行動が報告されています。
そのため保護者は最低でも発熱から二日間は転落など注意しておきましょう。
妊娠中は有益性を医師が判断し上回る場合のみ投与できます。
授乳中は有益性と母乳栄養の有責性で医師が判断します。(授乳は中止を検討)
向いてる方
ラピアクタの投与は以下のような場合が向いています。(医師判断になります)
・早急に症状改善したい方
・点滴治療が可能な方
ゾフルーザ
抗インフルエンザ薬の5つ目は、ゾフルーザです。
ゾフルーザは新しいインフルエンザ薬です。錠剤タイプで、1回の服用で完結するというのが大きな特徴です。
半分の人はゾフルーザ服用後から24時間で、ウイルスがなくなります。
数あるインフルエンザ薬の中でも治療までの期間は最速といえる薬のひとつです。
効果が出るまでの期間が短い理由は、これまで紹介してきた他のインフルエンザ薬と作用機序が異なる点にあります。
作用機序
ゾフルーザの効果期間を短縮している最大の理由である作用機序を解説します。
これまで紹介してきたタミフルやリレンザは、ノイラミニダーゼ阻害剤タイプと呼ばれ細胞のウイルス放出を阻害します。
一方でゾフルーザは、エンドヌクレアーゼ阻害剤タイプでウイルスの合成を抑制します。
このメカニズムの違いから、服用24時間後にはタミフルの場合の1/100のウイルス量になります。
投与方法
ゾフルーザの投与(服用)方法は以下の通りです。
・服用量:
・成人および12歳以上の小児:1回2錠(40mg)
・体重80kg以上:1回4錠(80mg)
・12歳未満の小児で体重40kg以上:1回2錠(40mg)
・12歳未満の小児で体重20kg以上40kg未満:1回1錠(20mg)
・12歳未満の小児で体重10kg以上20kg未満:1回10mg
ゾフルーザは食事の影響を受けない薬です。そのため食事のタイミングに左右されず服用することができます
副作用
ゾフルーザの副作用は以下の通りです。
・悪心(頻度1%以上)
・発疹(頻度1%未満)
・頭痛(頻度1%未満)
・嘔吐(頻度1%未満)
・蕁麻疹(頻度1%未満)
・肝臓のALT増加(頻度1%未満)
・血管性浮腫(頻度不明)
上記の他、以下のような重大な副作用が発症する場合があります。
・出血(鼻血、血便、血尿など)
・ショック/アナフィラキシー
・虚血性大腸炎
また、因果関係は認められていませんが異常行動をとる場合もあります。
注意事項
ゾフルーザ服用にあたっての注意事項は以下の通りです。
・妊婦・過敏症の方、過去にアレルギー症状のあった方は服用できない
・小児・未成年が服用した場合は親が常に目をかける
・高齢者の場合は合併症に注意
・普段と違う行動がみられた際は服用を中止し医師に相談する
向いてる方
ゾフルーザの服用は以下のような方に向いています。
・吸入タイプではなく、錠剤タイプがいい方
・早くインフルエンザを治療したい方
※アビガン
アビガンはここまで紹介してきたインフルエンザ薬とは異なり、処方に国の許可が必要な特殊なお薬です。
作用機序もタミフルやリレンザとは異なり、ウイルスがもつRNAポリメラーゼの働きを阻害する作用でインフルエンザを抑制します。
処方に条件がある理由としては、動物実験で危険性を有するという結果が出ている点にあります。
ただそのような中でも、条件付き承認されているのはこれまでのインフルエンザと作用機序が異なるからです。
既存の作用機序の薬に対して耐性をもつウイルスが蔓延した際の防衛策として承認されているのです。
抗インフルエンザ薬はどれを選ぶべき
抗インフルエンザは基本的に医師と相談して、薬を決めていきます。
ここでは、どのようにして選ばれるのか以下の各判断基準を紹介していきます。
- 年齢
- 使用しやすさ
- 吸入できる
- 吸入できない
年齢
抗インフルエンザ薬は年齢によって適切な種類が変わってきます。
大まかに以下の分類となっています。
・1歳~5歳未満:この年齢の場合、基本的に吸入薬の使用は難しいと判断されます。そのため、錠剤やドライシロップタイプのあるタミフルが選ばれることが多いです。
・5歳~10歳未満:吸入薬が使用できるようになるため、タミフルに加えてリレンザなども選ばれます。
・10歳~20歳未満:リレンザかイナビルが使用されるケースが多いです。タミフルはこの年代の方で異常行動事例があったため、選ばれるケースが減ります。
・20歳以上:種類問わず使用可能です。
使用しやすさ
使用しやすさ(服用しやすさ)も抗インフルエンザ薬選択時に見られるポイントです。
例えば、タミフルは飲み薬で簡単なため、小さい子供でも飲みやすいでしょう。
加えて、最も臨床実績があるなど使用しやすさの面が考慮され、タミフルが多く処方されています。
吸入できる
吸入できるのであれば、リレンザやイナビルなども選択肢となります。
また、10代の小児は異常行動事例があったことからタミフルよりもリレンザを処方する医療機関が一定数あります。
吸入できない
年齢が低い、病気といった理由で吸入できない場合は、タミフルが処方されます。
タミフルの他、飲み薬タイプにはゾフルーザなどもありますが、まだまだ新しい薬であるためシェア率はそこまで高くありません。
抗インフルエンザ薬の予防での使用について
ハイリスクな人で、家庭内でインフルエンザが出たなど、インフルエンザの曝露を受けた場合、抗インフルエンザ薬を予防投与できます。
予防投与できるのはタミフル、リレンザ、イナビルの3種類です。
ただし予防投与の場合は、保険適用されず全額自己負担となります。
予防投与ができる条件は以下の通りです。
1.65歳以上の高齢者
2.慢性呼吸器疾患・慢性心疾患患者
3.糖尿病などの代謝性疾患患者
4.腎機能障害患者
予防投与期間
インフルエンザ薬の予防投与期間は以下のとおりです。
・服用回数:1日1回
・服用量:1回1カプセル75mg(通常成人/体重37.5kg以上の子供)
・服用期間:7~10日間
予防効果はタミフルを服用している期間の間のみ、持続する点にご注意ください。
タミフルにはジェネリックがある
タミフルだけは、国内でジェネリック医薬品が存在しています。
ジェネリック医薬品名は「オセルタミビル」です。沢井製薬などが製造・販売しています。
先発薬とジェネリック医薬品の成分に違いはなく、同効果・同安全性です。
タミフルは海外から通販で購入できる
リレンザとタミフルは個人輸入でも購入できます。インフルエンザ発症後以外で、予防目的で購入したい場合は個人輸入を使って買うのも選択肢です。
個人輸入とは海外の販売店から医薬品を購入することを意味します。
個人輸入代行サイトのような、通販感覚で海外の販売店から医薬品を購入することができるサービスもあるので活用してみてください。
通販で買えるタミフル | ||
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タミフル (先発薬) |
10錠:14,200円 | |
アンチフル(Antiflu) タミフルジェネリック |
10錠:4,290円 | |