うつ病とは、強いうつ状態が長期間続いてしまい通常の生活が送れなくなってしまう病気です。原因は様々で仕事のストレスや妊娠、出産などの環境変化などが挙げられます。早期発見が大切で薬の種類も多数あります。
「一日中落ち込んでばかりで、何をしていても楽しめない」「仕事をしていても悩み事が頭を離れず集中できない」「夜なかなか寝つけない」といった症状が続いていたら、もしかしたらうつ病かもしれません。
一時的な気分の落ち込みは誰にでもあることですが、ほんの小さなことでも気に病んだり、仕事や生活にも支障が出るほど心にも体にも影響が出てしまうと、精神的な袋小路から抜け出せなくなってしまうものです。
うつ病は「心の風邪」とよく言われます。
しかし、再発を繰り返し慢性化してしまうと、単なる風邪ではすまされません。
世界保健機関(WHO)によると、うつ病の人は世界で3億2000万人ほどに上り、有病率は世界人口の4%を超えると報告されています。
厚生労働省の調査によると、20歳以上の約7.5%が一度は患ったことがあるとされており、また日本人の有病率は6.5%(約15人に1人)と、世界標準からみても高いことが分かります。
どの年代でも男性より女性の方が1.5倍多く、男女ともに働き世代の40代が多いようです。
高齢になるほど女性と男性の差が広がり、特に60歳~64歳の女性を見てみると、人口の8%近くがうつで悩んでいるといいます。
うつ病という心の病は、気分障害という病気の一種です。
気分障害には、
上記の2種類があり、うつ病性障害が所謂、うつ病と言われる病気を指します。
双極性障害はうつ病と躁病(気分の異常な高揚)が循環的にあらわれる症状をいいます。
うつ病性障害には程度の重い「大うつ病性障害」、程度の軽い「小うつ病性障害」、小うつ病性障害が2年以上続いている「気分変調性障害」があります。
ここでは、うつ病性障害について詳しく説明していきましょう。
うつ病とはどのような症状なのかを知ることが大切です。
もしかしたらうつ病かもしれない、と思ったら次の点を確認してみてください。
2つの必須症状のうちどちらか1つを含む、合計5個以上の症状が2週間以上にわたって、毎日見られれば重度の大うつ病性障害、2~4個であれば軽度の小うつ病性障害と診断できます。
※上記にて、簡易的な
うつ病診断を行うことができます。
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必須症状「抑うつ気分」
気分が塞ぎこみがちな状態です。落ち込んだり、悲しんだり、気が滅入ったりすることが多くなることです。
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必須症状「興味または喜びの喪失」
何をしていても喜びを見出せない状態を指します。仕事や好きな趣味をしていても、それまでは楽しく充実していたのに、楽しくなく興味も持てない症状です。
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「食欲の減退または増加、体重の減少または増加」
食欲がない、体重が減っているという症状です。目安は1ヶ月で5%減少していること(あくまで目安ととらえてください)。逆に、食欲が増えて過食することで、体重が増加することもあります。
-
「不眠または睡眠過多」
夜中に何度も目が覚めてしまう(途中覚醒)、早朝に目が覚めてしまう(早朝覚醒)、熟睡できないという症状です。まれに、日中眠気が強く出てしまい過眠することもあります。
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「精神運動性の制止または焦燥」
家事、人付き合い、通勤など、日常的に行っていることを辛いと感じることです。焦燥はじっとしていられず、動き回っていたり、キレやすい状態も指します。周りから見てもそうと確認できたり、指摘されることが要件になります。
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「易疲労性、気力の低下」
疲れやすく、倦怠感が持続する状態です。何をするにも意欲が持てず、億劫と感じてしまいます。うつ病の方に多く見られる症状です。
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「強い罪責感、無価値感」
上手くいかないのは全部自分のせいだという強い自責感や、人に迷惑ばかりかけている、価値のない人間だという無価値感が強い症状です。この症状もうつ病特有の症状の1つです。
-
「思考力や集中力の低下、決断の困難」
物事に集中できず、新聞を読んでいても、テレビを見ていても内容が頭に入ってこない状態です。考えがまとまらず、同じ考えが堂々巡りしてなかなか決断できないことも多く見られます。
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「自殺念慮」
死のことを考えて、死ねれば楽になるだろうなと思ったり、実際に自殺を企てたりしたことのある状態です。
その他の特に注意したい身体症状
うつ病は心の病ですが、体にも不調を来たし、病気のサインを知らずに出していることも多いようです。
体調が優れず、しばらくの間、不調だと思っていたらうつ病だったというケースも珍しくありません。
気分の落ち込みと同時に、体調が悪い状態が続くようであれば、うつ病の可能性を疑ったほうがいいかも知れません。
- 頭痛
- 吐き気
- 口の渇き
- 便秘・下痢
- 肩の凝り
- 背中の痛み
- 体のしびれ、痛み
- 月経異常
- 発汗
こういった体調不良を強く訴える場合、抑うつ症状が目立たなくなり、うつ病と気付かないこともあります。
うつ病の原因について
うつ病には様々な原因が考えられます。1つの側面から見ても見つからないことも多く、多角的に違う方面から原因を探っていくことが必要になります。
代表的な原因を確認しておくことで、病気の元を知るきっかけになるでしょう。
- その人の性格に起因している場合(性格的要因)
- うつ病になりやすい性格(几帳面、真面目など)を遺伝していることに起因している場合(遺伝的要因)
- ストレス・貧困・社会的孤立などに起因している場合(環境的要因)
- 糖尿病やがん・認知症などの病気に起因している場合(疾病要因)
- ステロイド、インターフェロン、アルコール依存症などに起因している場合(薬物・アルコール要因)
などがあげられます。
1950年代に第一世代と言われる三環系の最初の抗うつ薬が開発されて以来、多くの新しい薬が誕生してきました。
有効性に大きな違いはないと言われていますが、作用の仕方や副作用のあらわれ方が違うため、自分に合ったお薬を選ぶ必要があります。
まずはどのような抗うつ薬があるのか、どのような効果や副作用があるのかなどを確認していきましょう。
三環系抗うつ薬(TCA)
初期の抗うつ薬で、化学構造中に環状構造が3つあることからその名がつけられました。
抗うつ薬としては、SSRIが第一選択薬として広く使われていますが、効果の強さや有効性から、限定的ですが使われることがある医薬品です。
神経伝達物質のセロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害作用がある他、アセチルコリン受容体、アドレナリンα1受容体、ヒスタミンH1受容体に対する阻害作用もあるため、うつに対して強い効果を発揮します。
しかし、第一世代と呼ばれる初期の三環系抗うつ薬は抗コリン作用が強く、口渇や便秘、尿が出にくいなどの副作用が出ることがあります。
阻害作用が多いことから、全般的に見て眠気、めまいなど副作用が強く出る傾向があるようです。
稀に、高熱、発汗、手足の震えが出ることがあります。ただし、第二世代の三環系抗うつ薬の場合は、第一世代より抗コリン作用が弱いため、口渇や便秘などの副作用はあまり強くはないようです。
また、三環系の抗うつ薬には抗うつ作用の他、
夜尿症にも有効とされています。睡眠の改善や神経障害性の疼痛緩和にも利用されることもあります。
一般的に、抗うつ効果が出てくるまで2週間~4週間ほどかかるとされています(個人差があります)。
その間、副作用だけが出てしまうということがあるので、断薬せずに効果が出るまで服用することが大切です。
四環系抗うつ薬
三環系抗うつ薬を改良して開発されたのが、第二世代の四環系抗うつ薬です。
脳内にあるα2受容体を阻害し、気力や覚醒に関わる神経伝達物質のノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、脳内のノルアドレナリンの量を増やし、抗うつ作用があらわれてきます。
三環系抗うつ薬とは違い、セロトニンの再取り込みは阻害しません。
抗コリン作用、抗ドーパミン作用も低いため、効果は三環系抗うつ薬より弱くなりますが、副作用も弱まるため安全性の高い薬といっていいでしょう。
また、即効性があり、4日ほどで効果があらわれてくると言われています。
一部で
睡眠薬の代替えとして利用されています。
副作用は眠気、めまい、ふらつき、心悸亢進などです。
抗コリン作用が軽減されているため、口渇、便秘などは三環系のお薬よりは出にくいですが、反面、けいれんを起こしやすくなるため、抗けいれん作用のある抗不安薬と併用するケースもあります。
また、緑内障の方が服用すると症状が悪化することがあるので注意が必要です。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor) は第三世代と呼ばれる抗うつ薬にして、うつ病治療薬の第一選択薬です。
うつ病患者の70%がこのSSRIを服用し、日本では推定100万人が使用しているとされています。
パニック障害や社会不安障害などの
不安障害の治療現場でも多く用いられ、依存性、中毒性が少ないため安全な薬として多くの方に処方されています。
通常、ニューロンから一度放出された神経伝達物質のセロトニンは、シナプスとシナプスの間に貯まり、セロトニン受容体によって再取り込み(吸収)されて利用されますが、うつや不安障害の人はそのセロトニンの濃度が低下しています。
SSRIは一度放出されたセロトニンの再取り込みを阻害することで、セロトニン濃度を高いままで維持し、神経伝達能力が向上して不安や恐れを抑制させることができます。
ただし、効果が発現するまで数週間かかり、中長期的な服用が必要になります。
依存性はありませんが、お薬によって異なる作用時間や副作用、他の薬物との相互作用を考慮したうえ、最適な治療薬を選ぶことが大切です。
気をつけておきたい副作用は、
上記3つがあげられます。
ポイント!
SSRI離脱症候群の症状
SSRI離脱症候群は、急に断薬することで生じます。
- 不眠
- ふらつき
- 吐き気
- 過剰覚醒
- セロトニン症候群(脳内のセロトニン濃度が高まることで生じる異常発汗、高血圧、吐き気、下痢、手足の震え、頭痛、興奮など)
などがあげられます。
賦活症候群の症状
賦活症候群は、初期刺激症状とも呼ばれます。
- 投与初期の増量したときに見られる不安
- 焦燥
- 易刺激性(イライラしやすい)
- パニック発作
- 過剰覚醒
などがあげられます。
賦活症候群に関しては、24歳以下では希死念慮が強く出てしまうことがあるため、掛かり付けの医者へ相談するなど、使用するには細心の注意が必要です。
国内で承認されているSSRIは次の4種類があります。
-
フルボキサミン
…日本で最初に発売(1999年)されたSSRI。うつ病、社会不安障害、強迫性障害に効果があります。吐き気、頭痛などの副作用があり、24歳未満の若年者が服用する場合、自殺願望を示すことがあります。
・ルボックス・ジェネリック
・フルボキサミン(ルボックス)
-
パロキセチン
…日本では2000年に販売され、うつ病、パニック障害、社会不安障害、強迫性障害、PTSDに効果があります。また、月経前症候群、摂食障害にも用いられます。
また、SSRIの中でも最も離脱症状が出やすくなり、不眠、ふらつき、吐き気、過剰覚醒などがあらわれることがあります。
他の薬より眠気が強く出たり太りやすくなることもあります。
また、SSRIの中でも、顕著に敵意、攻撃性を示すことがあり、他害行為を見せるケースが比較的多いようです。
・パキシル
・パキシル・ジェネリック
-
セルトラリン
…日本では2006年に発売され、うつ病、パニック障害、PTSDに有効です。
副作用として、悪心、下痢、めまい、口渇などがあり、特に吐き気がもっとも多く見られます。
これは胃腸に多く存在するセロトニンが刺激されるためです。パニック障害には他のSSRIよりも有効と考えられています。
・ジェイゾロフト
-
エスシタロプラム
…日本では2011年に発売され、うつ病、うつ状態、社会不安障害に有効です。SSRIの中でも、最もセロトニン再取り込み阻害作用を持っています。離脱症状が比較的少ないのが特徴です。
・レクサプロ
・レクサプロ・ジェネリック
・シタロプラム(レクサプロ)
・プロザック
・プロザック・ジェネリック
・フルニル(プロザック)
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
SNRI(Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors)は第四世代の抗うつ薬です。
SSRIの主要作用であるセロトニンの再取り込み阻害効果だけでなく、ノルアドレナリンの再取り込み阻害効果もあります。
ただし、効果面ではSSRIと優劣はなく、医療機関では症状によってどちらを使用するかを決定しています。
一般的に服用することで、不安や落ち込みが軽減され、やる気や気力が出てきます。
また、下行性疼痛抑制系を活性化させることで、神経障害性の疼痛を緩和する効果もあります。
副作用は不安、焦燥、パニック発作、易刺激性、衝動性、軽躁、眠気、めまいなどです。
ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用によって興奮神経が刺激され、不眠などの副作用が出やすくなるようです。
気をつけておきたい副作用は、
-
悪性症候群
…悪性症候群は、投与後、減薬後、中止後の1週間以内に出やすく、急激な発熱、発汗、意識障害、手足の震え、言葉が出ずらい、よだれが出る、脈拍が上昇するなどの症状が生じます。これは薬がドーパミン神経系に作用しているためと言われています。
-
セロトニン症候群
…セロトニン症候群は、脳内のセロトニン濃度が高まることで生じる異常発汗、高血圧、吐き気、下痢、手足の震え、頭痛、興奮などです。
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サインバルタ(一般名:デュロキセチン塩酸塩)
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イフェクサー(一般名:ベンラファキシン塩酸塩)
・
トレドミン(一般名:ミルナシプラン塩酸塩)
NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
うつ病では、ノルアドレナリンやセロトニンなどのモノアミン性と呼ばれる神経伝達物質の濃度が低下することで、抑うつ気分が生じたり落ち込んだりします。
そのため、SSRIやSNRIという医薬品では、それらの神経伝達物質の細胞への再取り込み(再吸収)を阻害することで、物質濃度が高まり抗うつ作用が働きます。NaSSAも同様に、ノルアドレナリンとセロトニン濃度を高める医薬品ですが、これまでの2種類とは作用の仕方が違います。
SSRIやSNRIでは、セロトニンなどのモノアミン神経伝達物質の受容体に対する親和性が低いため、再取り込みを阻害することで神経伝達物質の濃度を高めていましたが、NaSSAではモノアミン神経伝達物質に対する親和性が高いため、α2受容体をふさぐことでセロトニンやノルアドレナリンの分泌を促します。
また、5-HT2受容体と5-HT3受容体を遮断することで、抗うつ作用に関わる5-HT1A受容体を特異的に活性化させることにで、セロトニンによる抗うつ効果を発揮させています。
その効果は短時間で発現し、長く持続します。
副作用は体重の増加や傾眠の他、口渇、倦怠感などです、特に傾眠は50%の人にあらわれるようです。
傾眠や体重増加は男性より女性に多く見られ、そのほかの副作用に関しては性差はないようです。
また、多くの向精神薬に共通することですが、服用を終了すると離脱症状を起こしやすくなります。
服用を中止する場合は、用量を少しずつ減らしていくことが望ましいでしょう。
・
レメロン・ジェネリック
分類不明
-
デジレル(一般名:トラゾドン塩酸塩)
デジレルは、精神賦活作用と抗不安作用を持つ抗うつ剤で、不安や無気力を伴う初期段階の軽いうつ病の治療薬です。
「SSRI・SNRI」といった抗うつ剤の補助薬として利用する事も多く、これらの薬効を強くし副作用を抑制する効果があります。
-
セディール(一般名:タンドスピロンクエン塩酸塩)
セディールは、アザピロン系の抗不安薬で、過敏になっていた神経を「抑え込む」のではなく、不安に思う神経を「狙い撃ち」することが出来るのが大きな特徴となっています。
抗うつ剤の補助薬として利用される事が多い薬です。
うつ病の人は年々、増加傾向にあります。
複雑化した社会にあってストレスがたまりやすかったり、震災や災害をきっかけに抑うつ的な気分が持続してしまったり、うつになる原因はいくらでも見つかる時代になってきました。
テレビや雑誌、マスコミの報道でもうつ病が取り上げられることが多くなっているように見えます。
うつに関する書籍が出版されればベストセラーになったり、話題に事欠きません。
そうするとつい、「自分ももしかしてうつかも?」と考えてしまうこともあるかもしれません。
ひとくちにうつ病といっても、様々な症状があります。
以下で代表的なうつ病の種類をあげていますので、当てはまる点がないか確認してみてください。
メランコリー親和型うつ病
ドイツの精神科医テレンバッハが、入院していた患者さんの性格を調査して見出したのが「メランコリー親和型性格」です。
そのメランコリー親和型性格のために発症したうつ病をメランコリー親和型うつ病といいます。
その性格の特徴は次の通りです。
- 真面目で几帳面である
- 責任感が強く、自分を責めがちである
- ルールや秩序に忠実で、献身的である
- 頼まれると嫌とは言えない
- 仕事熱心で完ぺき主義である
- 手抜きができず、無理をしてしまうことが多い
従来はこういった執着気質型のうつがとても多かったようです。
いつも抑うつ感が強く、何をしても楽しいと感じられません。
ささいなことで絶望的になったり、悲観的になって自信を喪失してしまいます。
口数が少なくなったり、朝起きられず遅刻することが多くなったり、仕事や勉強への意欲が著しく低下します。
食欲が低下して体重も落ち、夜寝ついても途中覚醒することが多くなり、熟睡することができません。
非定型うつ病(ディスチミア親和型うつ病)
非定型うつ病は従来のようなうつ病とは違う、若い世代に多い新しいタイプのうつ病です。
それも10代~20代の女性に圧倒的に多い現代型うつ病と言っていいでしょう。
気分屋で精神が不安定になりやすく、気分の変動が大きいのが特徴です。
従来型のうつ病であれば、常に気分は沈みがちで何をしても楽しい気分になれませんが、非定型うつ病では、良いことや楽しいことがあると気分が明るくなります。
夕方から夜にかけて気分が悪く沈んでしまい、イライラしがちになります。
また、過眠、過食の傾向が強くなったり、疲労感や倦怠感が強く出てしまいます。
他人の評価が気になったり、よく見てもらいたいという意識が強く、いい子と言われるような人が多いようです。
プライドが高く、弱みを見せない人、人に助けを求めずすべて自分自身の力で解決しようとする人に多いようです。
季節性うつ病
毎年、秋から冬にかけてうつの症状があらわれるのが季節性うつ病です。
ウインターブルーとも呼ばれ、冬季うつ病といったり、季節性情動障害(SAD)といったりします。
日照時間が短くなる10月、11月にかけて発症し、日照時間が長くなる春先になると症状がだんだん回復してきます。
これは、秋から冬にかけて日照時間が減少することで、脳内の神経伝達物質セロトニンが減ることで脳機能が低下したり、メラトニンの分泌が抑制されることで体内時計が乱れてしまうためです。
気分が落ち込んだり集中力が低下したりする他に、過眠、過食が特徴です。甘いものをずっと食べ続けたり、いくら眠っても眠気がとれず1日に10時間以上も平気で眠っていたりします。
通常のうつ病と比べると症状はそれほど重くはありませんが、悪化すると日常生活に明らかな支障が出るほど深刻化してしまうこともあります。
朝、日光を浴びてセロトニンの分泌を促したり、ウォーキングなど有酸素運動で汗を流して規則正しい生活を実践することで改善されていきます。
精神病性うつ病
精神病を伴ったうつ病で、通常のうつ病と比べて重症化しやすく再発性も高いことが知られています。
典型的な症状は心気妄想(ガンではないのにガンと思い込むなど)、貧困妄想(お金が無くどうしようもないから死ぬしかないなど)などの微小妄想をともなうことが多いようです。
うつ病全体のおよそ15%ほどが、この精神病性うつ病を発症していると言われています。
特に老年期うつ病の45%がこの精神病性うつ病で、非精神病性うつ病とくらべて入院回数が多くて生活能力が乏しく、自殺率も高くなってしまいます。
抗うつ薬と抗精神病薬との併用で、うつ症状が軽減するという報告がありますが、電気けいれん療法(ECT)が有効であるという報告もあり、その効果が確実視されているようです。
また、精神病性うつ病は再発率が高く、退院しても1年以内に80%の人が再発してしまいます。
病歴の長い人、過去の再発回数の多い人、若い人であるほど再発率も高くなるようです。
産後うつ病
女性は妊娠や出産を機にうつ病になるケースがあります。
その原因はホルモンバランスの変化が大きく関係してきます。
妊娠期には出産に備えて、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されることで、体調が変化し精神的不安なども重なって妊娠うつになることがあります。
妊娠うつの場合は軽症のことが多く、一時的な気分の落ち込みであることがほとんどです。
しかし、気をつけないといけないのは、出産後にやってくる産後うつです。
産後うつもエストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモン量の変化によって、心と体に不調を来たすことでかかるうつ病の一種です。
症状が長期化し、重症化するケースもあるため早目の対策が必要になります。