軟性下疳とは軟性下疳菌という菌に感染することで起こる性感染症です。
男女の性器に潰瘍をつくり、激しい痛みを伴うのが特徴です。
昔までは梅毒や淋病に続く3大性病の1つでしたが、戦後に一度流行したものの、現在では軟性下疳の感染は激減し、日本国内の感染は少なく、患者数も少ないので国内感染はほとんどないと考えてもいいです。
軟性下疳への感染は年間に数十件あればいい方と言われ、医療関係の仕事をしていても軟性下疳を診た方は少ないです。
海外で性行為を行った場合に感染する可能性があり、もともと軟性下疳はアフリカや東南アジア、南米などの熱帯地域に多い病気と言われています。
ですが近年では、グローバル化が進んでいるので外国の方との交流が増えると国内で感染を拡大する可能性は十分に考えられる性病です。
軟性下疳の症状は男女ともに同じ様な症状が現われ、男性では陰茎のカリや亀頭の周辺、女性は外陰部に感染します。
感染してから1~7日程度で発症し、初期症状として発赤した米粒や大豆程度の大きさのコブが1~複数、性器や肛門付近にできます。
コブは次第に黄色くなり膿を含んだ膿疱となり、潰れて潰瘍となり出血します。
潰瘍の大きさには個人差があり、複数のコブが潰瘍となった場合には潰瘍が合体し広がってしまうケースもあります。
潰瘍ができると皮膚がえぐれてしまったような状態になるので、強烈な痛みを伴います。
ただ女性は痛みが現われないこともあります。
軟性下疳は放置していても数週間程度で瘢痕となり、治癒することもありますが再発の危険があるので治療することが必要です。
また感染者の半数くらいの方が潰瘍ができてから7~14日程度の期間をおいて、太ももの付け根にあるリンパが腫れてしまうことがあり、炎症を起こすため皮膚が破れてしまい膿が出てくることがあります。
オーラルセックスやディープキスによって口腔に感染してしまった場合には口腔内に小さな潰瘍ができます。
軟性下疳の原因となっているのは、軟性下疳菌であるヘモフィルス・デュクレイと呼ばれる細菌が原因となります。
潰瘍が潰れた部分に直接触れてしまうことで感染を引き起こし、セックス・アナルセックス・オーラルセックスなどの性行為全般によって感染を起こしますが、口腔に感染してしまっている時はディープキスによって感染してしまうこともあります。
また梅毒と一緒に感染を起こす場合があり、混合下疳と呼ばれます。
軟性下疳の症状に隠れてしまい潜伏梅毒となるので、梅毒の併発に気付きにくくなっています。
軟性下疳の治療には抗生物質が効果を発揮すると言われ、7日間程度で治癒することができます。
リンパに溜まってしまった膿は切開を行い取り除く場合もあります。
使用する抗生物質は、
・マクロライド系
エリスロシン(一般名:エリスロマイシンステアリン酸塩)
ジスロマック(一般名:アジスロマイシン水和物)
感染による細菌の増殖を防ぐことができ、細菌を死滅させ痛みや化膿を改善してくれます。
クラミジアやマイコプラズマなどの治療にも使用される薬。
・ニューキノロン系
シプロサキシン(一般名:塩酸シプロフロキサシン)
抗菌薬となり、色々な細菌に対して有効です。
またアレルギーを起こすことも少ないため、ペニシリン系やセフェム系にアレルギーを持っている方でも服用することができます。
・セフェム系
ロセフィン(一般名:セフトリアキソンナトリウム水和物)
ペニシリン系に近いとされる抗生物質であり、上記2種類の薬と同様に細菌の増殖を防ぎ、殺菌効果があります。
潰瘍にはサルファ剤やテトラサイクリンが含まれている軟膏薬を使用し、内服薬と外用薬を使った治療を行います。
軟性下疳に使用される抗生物質の副作用について紹介します。
稀なケースではありますが、重篤な症状を伴うことがあるので副作用を知ることは薬を使う上で重要なことになります。
・マクロライド系の副作用
胃腸に副作用が現われることがあり、胃痛や吐き気、下痢など症状が現われます。
服用中に発疹や水ぶくれ、口内がただれた場合などは重篤な症状の前兆である可能性があるので、速やかに医師に相談するようにしてください。
またジスロマックの場合、作用時間が長くなっているので、服用を終了して数日経過してから副作用の発現がある場合があるので注意が必要となります。
・ニューキノロン系の副作用
消化器系の症状が主症状となり、嘔吐、吐き気、食欲不振などが挙げられ、他には不眠や頭痛、けいれんなどの副作用があります。
また光線過敏症になることもあり、皮膚が日光にあたることで水ぶくれができたり赤くなったりすることがあるので、服用中の肌の露出は控えた方が良いとされています。
・セフェム系の副作用
多くみられる副作用として下痢が挙げられます。
他には腹痛、吐き気、発疹などの症状が見られます。
アレルギー症状を起こす場合があり、重篤な症状の中にはアナフィラキシーショックがあります。
稀なケースでの発症ですが、念のための注意が必要となります。
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