アフターピルは不妊症に繋がる？理由や妊娠と赤ちゃんへの影響

アフターピルは望まない妊娠を回避するための緊急避妊薬です。

では、アフターピルは不妊に繋がることがあるのか、今後赤ちゃんを産みたいと思った時の赤ちゃんへの影響はないかを解説していきます。

本記事を読むことで、アフターピルと不妊症との関係性や、ご自身の身体と赤ちゃんへの影響などを知ることができるようになります。

アフターピルは不妊症に繋がる？

「将来、子供が欲しいけどアフターピルを飲むと妊娠できなくなるのか？」
そんな疑問を抱く方は多くいらっしゃいます。

結論から言うと、アフターピルを服用しても不妊に繋がることはありません。

アフターピルは排卵を遅らせる、または排卵をさせないことで妊娠を防ぐ効果を持つ薬です。これらの効果は、一時的なものであり、アフターピルが将来の不妊の原因に繋がることはありません。

そのため、将来子供が欲しい方でも安全に服用ができる医療用医薬品になります。

アフターピルが不妊症に繋がると言われている理由

アフターピルが不妊症に繋がると言われている理由は、「生理不順」にあります。

生理不順とは、女性の体内にある「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」という女性ホルモンによって生理がコントロールされており、その2つのホルモンのいずれかに異常が出るとホルモンバランスが崩れ、生理周期が乱れる「生理不順（別名：月経不順）」が発生します。

本来、正常な生理の周期は25日～38日間と言われていますが、アフターピルを服用することで排卵を抑制し、生理の周期が10日間前後ずれてしまう場合があります。

その女性ホルモンの乱れによって起きる「生理不順」と、アフターピルによる生理周期の乱れの意味を結び付けてしまい、アフターピルは不妊症に繋がると騒がれているのでしょう。

しかし、冒頭でもお伝えしましたように、アフターピルは一時的な効果となりますので、アフターピルによって不妊症に繋がることがありません。

アフターピルを止めたら妊娠できる身体に戻る

アフターピルの服用を止めたら妊娠できる身体に戻ります。

アフターピルは、排卵を抑制し妊娠を防ぐ効果があります。この効果はアフターピルを服用している間であり一時的な効果です。

そのため、もし妊娠したい場合はアフターピルの服用を中止することで、2週間～1ヵ月ほどでアフターピルを服用する前のホルモン状態に戻り、妊娠することができる状態に戻ります。

アフターピルを止めたのに妊娠しない理由は別の可能性がある

アフターピルと不妊症の関係性はないため、アフターピルの影響で不妊症になることはありません。しかし、アフターピルの服用を止めたにも関わらず、中々妊娠しないという人も見受けられます。

もしかすると、それはアフターピルが原因ではなく、別の理由があるからかもしれません。そこで、ここからは「女性側の理由」「男性側の理由」「両側に共通する理由」の3つに分けて、その他で考えられる妊娠しない理由をご紹介します。

女性側の理由

女性側の理由で妊娠しない理由は主に以下のとおりです。

それぞれ見ていきましょう。

排卵因子

女性側の問題で妊娠しない理由1つ目は、「排卵因子」です。

排卵因子（排卵障害）とは、排卵に至る過程において重要な3つのホルモンに障害が発生することで起きる不妊症の1つです。

女性が体内で排卵する際、脳の直下に位置する内分泌器官「脳下垂体（のうかすいたい）」から分泌される「卵胞刺激ホルモン」「黄体化ホルモン」「プロラクチン」の3つのホルモンによって子宮内膜を妊娠に適した状態にします。

しかし、これらのホルモンバランスが崩れることによって排卵障害がおき、不妊への繋がると言われています。

卵管因子

女性側の問題で妊娠しない理由2つ目は、「卵管因子」です。

卵管因子とは、子宮の左右両側にある細い管の卵管が、子宮内膜症やクラミジア感染症によって「癒着」「閉鎖」「炎症」が起き、卵子が待機している位置まで精子が辿り着かないことが原因で引き起こす不妊症です。

頸管因子

女性側の問題で妊娠しない理由3つ目は、「頸管因子」です。

頸管因子とは、子宮の入り口である頸管が「頸管粘液不全」と「抗精子抗体」のいずれかの症状が原因で引き起こす不妊症です。

頸管粘液不全と抗精子抗体のそれぞれの意味は以下のとおりです。

頸管粘液不全	精子が子宮内に入りやすくするための頸管粘液の分泌が不十分な状態になり、正常な精子の侵入ができず、妊娠しづらい状況になること。
抗精子抗体	頸管粘液や精液の状態が問題ないにも関わらず、身体が精子を異物と判断してしまい、精子に対する抗体を作ってしまうこと。

子宮因子

女性側の問題で妊娠しない理由４つ目は、「子宮因子」です。

子宮因子とは、主に子宮内にできる子宮筋腫や子宮内膜ポリープという良性の腫瘍によって引き起こす症状で、その腫瘍の発生箇所やサイズによって卵管を圧迫したり内膜に突出することが原因で引き起こす不妊症です。

男性側の理由

男性側の理由で妊娠しない理由は主に以下のとおりです。

それぞれ見ていきましょう。

造成機能障害

男性側の問題で妊娠しない理由１つ目は、「造成機能障害」です。

造精機能障害とは、精子を作り出す機能に問題が発生し、精子の濃度や運動率が下がり、正常に精子が作れない状態のことを指します。

造精機能障害になる割合は、おおよそ8割から9割と言われており、その内の半分以上は原因がわからないと言われています。

性機能障害

男性側の問題で妊娠しない理由２つ目は、「性機能障害」です。

性機能障害とは、勃起機能が低下することによって引き起こす症状で、別名「ED」「インポテンツ」とも呼ばれています。

EDの種類	原因
器質性ED	臓器や器官の異常によって引き起こす
心因性ED	ストレスや緊張、トラウマなどから引き起こす
薬剤性ED	常用している薬の副作用で引き起こす
混在性ED	器質性EDや心因性ED、薬剤性EDが混在して引き起こす

上記の表のとおり、EDには４つの種類があり、それぞれ原因も異なります。

改善方法に関しても、それぞれのEDタイプによって若干異なり、基礎疾患の治療やカウンセリングなどが挙げられますが、これら4種類のEDに効果的なのがED治療薬を使った治療法になります。

精路通過障害

男性側の問題で妊娠しない理由３つ目は、「精路通過障害」です。

精路通過障害とは、先天性もしくは後天性の障害によって、精子の通り道が狭くなってしまい、正常な射精ができなくなることを言います。

原因は、生まれつき精管が形成されていない先天性による障害が1つ、2つ目は尿道炎や外傷、射精管閉塞症、前立腺嚢胞などの後天性による障害があります。

女性と男性の両側の理由

女性側と男性側の両側に当てはまる妊娠しない理由は、主に以下のとおりです。

それぞれ見ていきましょう。

加齢

両側に当てはまる妊娠しない理由１つ目は、「加齢」です。

これは主に「妊孕性（にんようせい）」が関わっており、女性であれば「妊娠する力」、男性であれば「妊娠させる力」が低下し、両側もしくは片側の加齢に伴って不妊症を発症すると言われています。

特に女性は、年齢と妊孕性が深く関わっており、30歳頃から徐々に妊娠する力が下がり、35歳になるとさらに加速して妊孕性が低下すると言われています。

ストレス

両側に当てはまる妊娠しない理由２つ目は、「ストレス」です。

女性の場合では、卵巣からホルモンバランスを分泌しますが、そのホルモンバランスがストレスによって乱れてしまうと、卵巣が正常に機能しなくなり、月経周期の乱れや無月経などを引き起こす「卵巣機能不全」になってしまう可能性があります。

男性の場合では、ストレスを受けた状態が続くと交感神経が優位になってしまい、血管が収縮します。血管が収縮すると身体は血液不足に陥り、身体の中の細胞を攻撃する活性酸素が発生します。

これを「酸化ストレス」と言い、ストレスに弱い性質を持つ精子は、酸化ストレスによってDNAを傷つけられてしまい、精子の運動量の低下や精子の数が減ってしまい、結果的に男性による不妊症に繋がってしまうと言われています。

性感染症

両側に当てはまる妊娠しない理由３つ目は、「性感染症」です。

性感染症の中でも特に「クラミジア感染症」が、不妊症になる可能性があると言われています。

女性がクラミジア感染症になった場合、クラミジア病原体が骨盤腹膜や子宮内膜などに達してしまい、卵管が閉鎖してしまうことで不妊症に繋がると言われています。

また、女性の場合は無症状の場合がほとんどのため、早期発見が難しく、結果的に症状が悪化して体外受精や人工授精をしなければいけないケースもあります。

男性がクラミジア感染症になった場合、精子の形成が阻害してしまい、精子の質を下げてしまうということが海外の研究で明らかにされました。

また、男性がクラミジアに感染してしまうと、精液検査の際に調べられる「精液の量」「精子濃度」「精子の運動率」「精子の奇形率」である精液初見が悪くなるというデータも出ており、結果的に正常な精子を作り出すことが難しくなり、男性側をきっかけに不妊症になってしまうということになります。

参考：ScienceDirect

アフターピルを服用すると今後の赤ちゃんに影響はあるのか？

アフターピルを服用した場合、今後生まれてくる赤ちゃんに影響はあるのでしょうか？

結論から言うと、アフターピルを服用しても赤ちゃんには影響はありません。

これも「アフターピルを止めたら妊娠できる身体に戻る」でお伝えしたのと同様に、アフターピルの効果は一時的であり、アフターピルの服用を中止すれば、アフターピルを服用する前のホルモン状態に戻るため、体内にアフターピルの成分は消えてなくなります。

つまり、お腹の中にいる赤ちゃんには何ら影響を与えることはありません。

また、アフターピルを服用した経験があると生まれてくる赤ちゃんが奇形児になるという噂が流れてくることがありますが、現在そういった事例や報告はありませんので、心配になる必要はないでしょう。

アフターピルは不妊症に繋がらないけど注意が必要

これまで解説しましたように、アフターピルと不妊症の関係性はないため、アフターピルを服用することで不妊症に繋がることはありません。

ですが、アフターピルを服用する際には注意点があります。
それが以下のとおりです。

身体に及ぼす影響

まず、アフターピルを服用する場合、少なからず身体に影響があることを理解しておきましょう。

アフターピルの成分は、黄体ホルモンという種類の女性ホルモンで、他のピルよりもホルモン量が多い中用量ピルになります。

こうしたアフターピルが身体に及ぼす影響として考えられるのが、ホルモンバランスの乱れです。

女性の体内では、常に女性ホルモンの分泌が行われています。しかし、そこでアフターピルを服用することで一時的に血中の女性ホルモンの濃度が上がってしまい、身体に異変が生じてしまうのです。

アフターピルは副作用が出やすい薬ですが、その理由はホルモンバランスが乱れてしまうことにあります。

副作用

アフターピルは医薬品のため個人差はありますが、稀に副作用がありますので注意が必要です。主な副作用は以下のとおりです。

いずれの症状も、通常は24時間以内に治まりますが、特に注意が必要なのが「吐き気」です。万が一、アフターピルの副作用で嘔吐してしまうと、アフターピルの成分も一緒に吐き出されてしまう可能性があり、結果的に避妊に失敗する可能性が生じます。

そのため、アフターピルの効果を十分に発揮したい場合、アフターピルを服用してから2時間以内はできるだけ吐き気を我慢するようにしましょう。

また、極めて稀な副作用ですが、アフターピルの副作用で血栓症を発症するリスクもあります。血栓症のリスクが高いとされているのは、主に次のような方です。

上記に該当する方は、事前に医師に相談することをおすすめします。

常に避妊したい場合は他のピルも検討してみましょう

アフターピルは避妊に適した医薬品ではありますが、毎日のように服用すると少なからず身体に影響が出ます。

しかし、人によっては頻繁に服用しないといけない理由などもあるでしょう。その際は、アフターピルよりも身体の負担が少ない低用量ピルの服用も検討してみてください。

低用量ピルとは、2種類の女性ホルモン成分を含んだ避妊薬で、毎日継続して服用することで妊娠を防ぐ薬です。飲み間違いがなければ、ほぼ100％という高い確率で妊娠を防ぐことができ、また、避妊以外にも生理痛やPMS、肌荒れの改善など効果もある、多くの女性に使用されている避妊薬になります。

アフターピルによる不妊に関する質問

ここからは、アフターピルの不妊に関する質問にお答えします。

アフターピルを頻繁に飲みすぎると不妊症につながりますか？

アフターピルは、一時的な効果であり不妊症との関係性がないため、頻繁に飲みすぎた場合でも不妊症には繋がることはないでしょう。

アフターピルの副作用で不妊症に繋がることはありますか？

アフターピルの副作用は、主に「吐き気」「頭痛」「腹痛」「眠気」「消退出血」、稀に「血栓症」という副作用が発生しますが、これはあくまでアフターピルを服用した場合の副作用であって、不妊症との関係性はありません。

アフターピルを飲んでも妊娠する確率はありますか？

アフターピルは避妊に適した医薬品ですが、避妊率は100％ではありません。
海外の臨床試験では、性行為後72時間以内のアフターピルの服用で、妊娠する確率は1．34％という報告が挙がっています。

アフターピルを毎回飲むことで身体に悪い影響はありますか？

アフターピルを服用しても、直接身体に悪い影響はありませんが、稀にアフターピルの副作用によって、一時的に気分を悪くしてしまう可能性はあります。

アフターピルの服用経験があるのですが、もし妊娠したい時になったら不妊治療をする必要はありますか？

アフターピルと不妊症の関係性はありませんので、アフターピルの服用経験による不妊治療は必要ありません。しかし、もしアフターピルの服用を止めても中々妊娠しないという場合は、別の理由で妊娠しづらい身体になっているかもしれません。

詳しくは本記事の「アフターピルを止めたのに妊娠しない理由は別の可能性がある」でもご紹介しておりますので、改めてお読みください。

まとめ

ここまで解説しましたように、アフターピルと不妊症の関係性はありませんので、アフターピルを服用したとしても、不妊症には繋がりません。

アフターピルを服用したことがある方で、中々妊娠しないという方は別の理由で妊娠しづらい身体になっているかもしれません。

また、アフターピルは避妊に適した医薬品ですが、頻繁に服用すると少なからず身体に負担がかかってしまうため、これからも定期的なアフターピルの服用をされる方は、負担の少ない低用量ピルの検討をしてみるのも良いでしょう。

いずれにしても、アフターピルは緊急性を伴う避妊対策に適した医薬品です。

状況に応じて適宜、用法用量を守りながら避妊対策を心掛けましょう。